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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

ヤクルト・高橋奎二 活躍の裏に、石川雅規の助言

 

7月2日の中日戦こそ4回途中3失点も、ここまで負けなしの2勝


 6月13日のソフトバンク戦(PayPayドーム)で、6回1/3を投げて2失点。同24日の広島戦(マツダ広島)でも6回2/3を1失点。ヤクルトの6年目左腕・高橋奎二は、5月の二軍戦で大炎上した姿とは、まったく違う姿を見せてくれた。なぜ、ここまで別人のような投球になったのか。きっかけについては何となく想像していたが、想像というよりも、ヤクルト担当の妄想に近い。しかし先日、石川雅規にインタビューする機会があったので、その妄想をぶつけてみた。

「高橋選手、最近好投を続けていますよね。石川選手から何か助言されたりなどしたのでしょうか」

 石川は今季、プロ20年目にして初めて開幕を二軍で迎えた。3月の練習試合で精彩を欠いた高橋もまた、二軍にいた。本来ならば、開幕から先発ローテーション入りしなければならない2人だ。年齢は離れていても、「開幕二軍」の悔しさ、歯がゆさは同じ。何か言葉を交わしているはず――。そう思ったのだ。すると石川は、期待どおりの答えをくれた。

「奎二はほら、もともと良いものは持っていますから。彼に対して、もっとこうやったほうがいいとか、そういう技術云々よりも、気持ちの持ち方や、考え方なのかなと。なので『奎二、ちょっといい?』って声を掛けて、考え方をこうしたほうがいいんじゃないかってことを話させてもらいました。そうしたら奎二も『ちょっと考え方を変えてやってみたら、すごく良いです』みたいなことを言っていたので。僕らってこう、一緒に練習はするけど、気持ちだったりメンタルだったりは見えないですよね。変な話、僕は考え方一つでいろいろ何とかなると思っていて。考え方次第で、前向きになれる。そういう意味で、奎二には話をさせてもらいました。まあでも、奎二が頑張ると僕のチャンスがなくなるので、ちょっと複雑なんですけど(笑)。そこはほら、やっぱりチームとして切磋琢磨していかなきゃいけないし、彼は今後、スワローズを背負って立つピッチャーだと僕は思っているので」

 やはり、高橋の活躍の裏には、石川の助言があった。ただ石川は自分の立場を「一軍で投げても、ダメだったら二軍に落とされる立場」と話していた。ここまで3勝と好投しているとはいえ、高橋はチーム内の“ライバル”である。それでも高橋を思って声を掛けたのは、若き左腕とチームの未来を心から案じているからだ。

「僕だって、若手に負けてたまるかって気持ちでやっていますから。若手が頑張ってたら、『よっしゃ、俺も負けてらんねえぞ』って、僕は勝手に燃えるので(笑)。良い相乗効果じゃないですけど、いい刺激をし合いながら、やっていきたいと思いますね。野球はピッチャーだと思いますし、『ヤクルトはピッチャーが弱い』ってずっと言われてるので。ピッチャーで勝ったと言われるような試合を、これからどんどん増やしていきたいですよね」

 石川が目指すのは、ヤクルトの投手王国化。そしてその先にある、リーグ優勝や日本一だ。そのために、高橋の活躍は必須だと考えている。高橋は7月2日の中日戦(バンテリン)こそ、4回途中3失点と及第点のピッチングとはならなかったが、再び石川の言葉を思い出し、必ず修正してくるだろう。きっと石川も、それを期待しているはずだ。

文=依田真衣子 写真=川口洋邦
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