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「平成の怪物」松坂大輔が現役引退 イチローとの対談で明かされた「秘話」とは

 

色あせない数々の金字塔


松坂(右)の1年目オフに当時オリックスイチロー(左)と対談を行った


 日米通算170勝をマークした西武松坂大輔が、今季限りで現役引退することが発表された。「平成の怪物」の異名で数々の記録を打ち立て、記憶にも鮮明に残る名投手だった。

 新型コロナがなければ――そう思わずにはいられない。14年ぶりに古巣・西武に復帰した昨季は1試合登板なしに終わったが、春先は順調だった。オープン戦では2試合6イニングを投げて防御率3.00。先発ローテーション入りもほぼ当確ランプが灯っていた。本来予定されていた3月20日に開幕していたら、凱旋マウンドは実現していただろう。だが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で開幕が3カ月間延期に。コンディショニング向上を目的に右ヒザに注射を打つため戦列を離れると、開幕二軍スタートに。さらに試練に襲われる。右ヒジに異変が生じてしびれを除去するため、7月に脊椎内視鏡頸椎手術を受けた。

 その後の状態も思わしくなかったのだろう。今季も一、二軍登板なし。松坂は昨年の春季キャンプ中に、「現時点でも、たくさんの方に『おかえり』と言ってもらえているのですが、僕が本当にその声をかけてもらいたいのは、メットライフのマウンドに上がったときです。なるべく早く達成して、どんな形でも良いから、チームの勝利のための力にならければいけない」と決意を口にしていた。ファンへの恩返しができなかったのは心残りかもしれない。

 だが、打ち立てた数々の金字塔は色褪せない。横浜高3年時に絶対的エースとして、甲子園で春夏連覇を飾るなど公式戦44連勝無敗。西武に入団すると、高卒1年目の99年に16勝5敗、防御率2.60と圧巻の成績で最多勝、ゴールデン・グラブ賞、高卒新人で史上初のベストナインを受賞する。00年に14勝、01年に15勝で3年連続最多勝を飾り、03、04年と2年連続最優秀防御率を獲得。最多奪三振のタイトルも4度受賞している。05年は14勝13敗、防御率2.30。15完投、投球回数215イニング、226奪三振はいずれもリーグトップ。06年も第1回WBCで大会最多となる3勝、防御率1.38をマークして世界一に導き、大会MVPに。シーズンも17勝5敗、防御率2.13。6月16日の横浜戦で、ドラフト制度導入後最速の191試合登板で100勝を達成する。

 1980年生まれの選手を指す「松坂世代」という言葉が社会現象になったように、球界の枠を超えたスーパースターだった。メジャー移籍1年目の07年にレッドソックスで15勝、08年に18勝を挙げ、09年には第2回WBCで3勝を挙げて2大会連続MVPに輝く。30代は故障に苦しみ、ソフトバンク中日、西武と渡り歩いた。中日で18年に6勝4敗、防御率3.74でカムバック賞を受賞したが、その他の年は度重なる故障でファーム暮らしが大半だった。思うように投げられない時期が長く続いたが、40歳まで現役を続けたのは「野球が好き」だという純粋な思いだろう。

「はっきりとした結果が欲しい」


 松坂の数々の名言は月日が経っても語り継がれている。新人時代の99年4月21日のロッテ戦で黒木知宏との投手戦に敗れた後、「リベンジします」と宣言。6日後に再び黒木と投げ合い1対0でプロ初完封勝利。見事に雪辱を果たした。「リベンジ」はこの年の新語・流行語大賞の年間大賞に選ばれた。同年5月16日のオリックス戦では、イチローとの初対決で3打席連続三振に仕留め、「これまではいまひとつ自信が持てなかったけど、自信が確信に変わった」とお立ち台で発言し、大きな反響を呼んだ。

 松坂の1年目オフにイチローと対談を行い、週刊ベースボール00年1月27日号に掲載された。このお立ち台の発言に話題が及ぶと、イチローが「甘いよって思いました。1回で確信を持たれちゃ」と語り、松坂は「何かカッコいいことを言いたかった。『自信になりました』より、ひねりを加えたほうがいいかなって。でも、イチローさんが僕に対してイメージができていないって聞いていたので、次からが大変だな、と」と振り返っている。

 松坂との初対戦で3打席連続三振を喫したイチローだったが、約2カ月後の7月6日の西武戦では9回にバックスクリーンへ通算100号アーチを放っている。松坂は「僕は9回になる前に『交代するか』と言われていました。8回まで0点に抑えていたんですが、この日はあまり調子が良くなくて。だけど、9回の先頭バッターがイチローさんだったので『行かせてください』と。99本というのは知っていたので、(打たれて)良かったのかなというのはちょっとありましたね。でも、本当は抑えて完封したかった」と胸中を明かす。

 一方のイチローは、「最初の対戦でもそう。はっきりとした結果が欲しいわけです。彼が三振を取るか、僕が4本打つか。そりゃ負けたほうは悔しい。でも見る側から考えると、そのほうが面白い。彼との間で今後面白くなっていくためにはお互いを全部知り尽くした上でやりたい。それで、どれくらいできるかっていうのが純粋でしょ」と持論を展開していた。

 天才打者と怪物右腕。互いの存在を認め合う「平成の名勝負」に野球ファンは魅了された。名球会には届かなかったが、松坂大輔はプロ野球界に革命を起こした、すごい投手だった。

写真=BBM
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