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ベースを回る際の「ふくらみ」と「走路」は?【前編】/元中日・井端弘和に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は走塁編。回答者は現役時代、たびたび好走塁を披露した元中日ほかの井端弘和氏だ。

Q.ベースを回る際の「ふくらみ」と「走路」について教えてください。指導者によって意見が2通り見られます。ある程度ベースに近づいてから小さめにふくらんでベースに入っていくパターンと、早い段階でなだらかにふくらんでおいて、その最高点から最後にベースに角度をつけて切り込んでいくパターンです。どちらの考えが正しい(基本)なのでしょうか。ふくらみの大きさなど、基本も教えてください。(山口県47歳)


中日時代の井端氏の走塁


A.スムーズに速くベースランニングをするには、なだらかにふくらんでからベースに入るのが基本

 まず初めに、なぜ「ふくらむ」ことが必要なのかを考えてください。理想は一直線に走ってベースを直角に曲がることでしょう。しかし、それをトップスピードで行うことは物理的に不可能なため、「ふくらむ」ことが必要になるわけです。それを踏まえた上で、問のパターンは状況に応じて使い分ける必要があると思います。ただ、単純にスムーズに速くベースランニングをすることだけを考えるのならば、問で例が挙げられている後者、なだらかにふくらんでからベースに入っていくほうが圧倒的に回りやすいです。そういう意味では、こちらがベースランニングの基本と言えます。

 質問の方は勘違いしているのかもしれませんが、「ある程度ベースに近づいてから小さめにふくらんでベースに入っていくパターン」は、そうせざるを得ない状況にあるからではないでしょうか。例えば、バッターが打ったあと、明らかにヒットなのであれば真っすぐに一塁ベースに向かっていく必要はありません。しかし、三遊間や、二遊間、一、二塁間にそこまで強くはないゴロが飛んだらどうでしょう。捕球されれば、一塁に送球されて刺される可能性がありますから、まずは駆け抜けようと全力で一塁ベースに向かいますよね? その途中で、「抜けた」となれば、そこからふくらんで一塁ベースを回り、オーバーラン。守備がもたついているようであれば、二塁をうかがう姿勢を取るわけです。

 野手の正面に飛んでも同じですね。トンネルをしたり、弾いたり、大きく跳ねて頭上を超えるかもしれません。でも、そうなる前はまず一塁ベースに向かって全力のはずです。このような正面の打球は別にして、抜けるか捕られるかどちらか分からない打球で、最初からふくらんでしまっては、仮に捕球されたときにふくらんだ分、時間的なロスが生じてアウトになってしまう可能性が高くなります。

 これは一塁ランナーであっても、基本的な考えは変わりません。ただ、二塁ランナーはリードの取り方が一塁ランナーとは異なります。1本のヒットでホームへかえることが求められるため、ベースを結んだ一直線のライン上にリードを取る(一塁ランナーは一、二塁間の一直線上にリードすることが基本)のではなく、スムーズに三塁ベースを回ることを考えて、二、三塁のラインよりも数歩後ろに下がり、リードを取る段階からふくらんだ状態を作ります。

<「中編」へ続く>

●井端弘和(いばた・ひろかず)
1975年5月12日生まれ。神奈川県出身。堀越高から亜大を経て98年ドラフト5位で中日入団。14年に巨人へ移籍し、15年限りで現役引退。内野守備走塁コーチとなり、18年まで指導。侍ジャパンでも同職を務めている。現役生活18年の通算成績は1896試合出場、打率.281、56本塁打、410打点、149盗塁。

『週刊ベースボール』2021年6月21日号(6月9日発売)より

写真=BBM
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