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オリックス首位の原動力 大ブレークした杉本裕太郎に「本塁打王狙える」の声が

 

支配下で88選手中、87番目の指名



 最下位に沈んだ昨年から一転して、今年は首位を快走。戦前の下馬評を覆す快進撃を展開するオリックスを牽引しているのが杉本裕太郎だ。7月10日現在で打率.303、18本塁打、54打点。得点圏打率.333とチャンスに強く、四番に定着した。大学の後輩で球界を代表する強打者・吉田正尚とのコンビで、リーグ屈指のポイントゲッターになっている。

 同学年は菊池雄星(マリナーズ)、筒香嘉智(ドジャース)の91年世代。徳島商高で2年秋からエースに。本格派右腕として投手としての評価が高かったが、青学大に進学すると、自身の希望で早々と野手に転向する。2年秋のリーグ戦から四番に定着すると、3年時から2年後輩の吉田正と2者連続本塁打を3回記録。このころから強力な「相棒」だった。社会人野球・JR西日本を経てドラフト10位でオリックスに入団。支配下登録選手で88選手中、87番目の指名だった。

 身体能力に誰もが目を見張る。身長190センチ、104キロと恵まれた体格で振り抜いた打球はピンポン玉のように軽々とフェンスを越えていく。強肩で巨体に似合わず足も速い。だが、好不調の波が激しかった。変化球に脆く、スランプに入るとなかなか抜け出せない。一軍になかなか定着できなかったが、18年は7月11日の楽天戦(楽天生命パーク)で辛島航から満塁アーチを放つと、17日の日本ハム戦(京セラドーム)でも玉井大翔から2試合連続の満塁本塁打をマークした。ド派手な活躍を見せるが、その後は快音が聞かれずに1週間も経たずファーム降格。一軍出場は7試合にとどまった。

 野球人生の転機は昨年だった。開幕二軍スタートだったが、西村徳文前監督の退任を受けて中嶋聡二軍監督が監督代行を務めることに。「一緒に行くぞ」と伝えられて一軍に昇格した。打率.115まで落ち込んだこともあったが、中嶋監督は我慢強く使い続けた。杉本も打席に立ち続けることで対応力を高めた。41試合出場で打率.268、2本塁打、17打点と盛り返して成長の跡を見せた。

 課題だった確実性を高めるためにコンパクトなスイングを心がけていたが、今季は持ち前のフルスイングで広角に本塁打を量産している。6月は月間打率.375、5本塁打、19打点で月間MVPを獲得。11年ぶりの交流戦優勝を飾るなど、首位に浮上したチームを引っ張っている。

「ボールをゆったり見れているか」


現在、本塁打はリーグ3位タイの18本塁打だ


 杉本は好調の要因について、5月下旬に週刊ベースボールのインタビューで以下のように語っている。

「上半身がピッチャー側に流れているか、いないか。要は『ボールをゆったりと見れているか』です。それができているときは、ボール球を見逃せるし、ミスショットも少なくなってきますから。打ちたい、打ちたいと思い過ぎると、突っ込んでしまうので、注意してはいますが、あとは疲れも関係しているときもあるんですよね」

「体が疲れてくると、どうしても上(体)の力に頼ってしまう。そういうときは、ちょっと下半身のウエート(トレーニング)をするんです。負荷の軽いトレーニングですけど。そうすると、下半身を無意識に使えるようになる。刺激を入れてあげるというか」

 また、「中嶋監督が我慢して使ってくれた。それが一番。言葉が難しいんですけど、我慢して使ってもらっているからこそ、心に余裕を持つことができたというか……。使ってもらえる安心感ではないんです。むしろ、だからこそ頑張らないといけない。積極的かつ冷静に。その気持ちの調整ができたのは、監督が我慢して使ってくれたおかげ。だから、頑張らないといけないんです」と指揮官に対する感謝の念も忘れない。

 愛称は『北斗の拳』で大好きなキャラクターのラオウ。本塁打後にベンチ前で拳を突き上げる「昇天ポーズ」がすっかり板についてきた。他球団のスコアラーは「ホームランを打てるゾーンが広い選手。以前は好不調の波が長かったが、素早く修正できるようになった。タイトルを獲得する可能性は十分にある。吉田正、杉本の三、四番コンビは本当に脅威です」と警戒を強める。

 真価が問われる夏場に入る。相手のマークも厳しくなる中、チームを勝利に導くため、覚醒したラオウは打ち続ける。

写真=BBM
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