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伝統校対決で惜敗した法政二。5大会連続初戦敗退だが“10項目の部則”を徹底して古豪復活へ

 

残された時間で割いた「基本の徹底」


春2回、夏9回の甲子園出場を誇る法政二高は藤沢翔陵高との神奈川大会1回戦[7月11日]で敗退[0対1]した


 6月5日。神奈川大会抽選会後に神奈川県高野連・榊原秀樹専務理事は大会展望の中で、甲子園出場経験校同士の1回戦を「注目カード」と語った。

 法政二高と藤沢翔陵高による、伝統校対決は7月11日に行われた。法政二高はエース・柴田勲(元巨人)を擁した1960年夏、61年春の甲子園で連覇を遂げた古豪。一方、藤沢翔陵高は前身の藤沢商高時代の1973年夏に甲子園出場を誇る。

 試合会場となった等々力球場は昨年10月にリニューアルし、今春の神奈川大会から使用。ソーシャルディスタンスで、1階席はほぼ埋まり、2階席にまで観衆が詰めかけるほどの注目度の高さであった。

 試合は引き締まった展開となり、藤沢翔陵高は6回表に四番・今井諒真(3年)の右犠飛で奪った虎の子の1点を、エース右腕・橘海斗(3年)が5安打シャットアウトで守り抜いた(1対0)。

 春2回、夏9回の甲子園出場実績のある法政二高だか、2011年夏に8強に入ったのを最後に、苦戦が続いている。19年秋、20年夏(独自大会)、20年秋、21年春と4大会連続で初戦敗退。現チームの昨秋は2回戦で横浜商高(1対6)、今春は立花学園高との2回戦を、5回コールド(1対14)で姿を消していた。

 コロナ禍で、緊急事態宣言中の練習は週3回で1日90分、まん延防止等重点措置となって以降も、同校がある神奈川県川崎市中原区は東京に隣接しており「東京基準」が適用され、週5回、1日3時間と制限が入った。練習試合が組めたのは、6月以降の週末限定で1試合。しかし、天候不順などで、予定どおり、スケジュールを消化できなかったという。

 どこの学校も、制約のある中で活動している。法政二高が夏までに残された時間で割いたのは「基本の徹底」(鈴木瑛貴主将))だった。守りはゴロ捕球、攻撃ではバントと、基礎的な分野の精度を高める取り組みを続けた。この試合は1失策と、先発の左腕・赤間梢吾(3年)をもり立てている。主将・鈴木は背番号14の控え。「自分はプレーよりも、裏方で支えることに徹した」と、チームを結束させた。

「神奈川で勝てるチームへ」


 打線も見せ場を作ったが、あと1本が出なかった。懸念材料として挙げていた「実戦不足」を露呈したものの、春のコールド敗退から立て直してきたのは、伝統の力があってこそだ。

 最速133キロのエース・赤間はカーブ、スライダー、チェンジアップをコーナーに集め9回6安打1失点完投と粘投を見せた。「今までで一番、良い投球ができた」と、敗戦の中でも、達成感を口にした。「コロナで練習ができない時期もあったが、できないことを口にするよりも、やれることをやり、成果が出たと思う」と、卒業後は法大に進学し、神宮(東京六大学野球リーグ戦)での勝利を目指すという。

「一つひとつを積み上げていき、神奈川で勝てるチームを作っていきたい」。絹田史郎監督は新チームへの意気込みを語った。5大会連続初戦敗退も、次につながる試合内容だった。

・時間厳守
・チームワーク
・コンディションの調整
・希望を持て
・必勝の信念
・自覚して行動
・人格の養成
・努力と反省
・整理整頓
・礼儀厳正

 法政二高には10項目の部則がある。昭和、平成、そして、令和の時代と継承されてきた。基礎基本を反復すれば、必ず道が開ける。今夏の県大会を通じ、身に染みて感じたはずだ。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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