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早大本庄がコールド発進。シード校のおごりなく“チャレンジャー精神”で目標のベスト8以上へ

 

「良い試合運びができた」


埼玉大会でDシードの早大本庄高は主将・飯塚悠斗(左)とエース・齋藤成輝(右)の活躍で草加南高との初戦(2回戦、7月12日、熊谷)を5回コールド(14対0)で突破した


 これが、夏の怖さである。プレーボール直後の1プレーが、試合の流れを大きく変えた。

 7月12日の埼玉大会2回戦、早大本庄高は1回表、先頭の一番・遊撃の飯塚悠斗主将(3年)が初球をたたくと、草加南高の右翼手が飛球を見失った。打球が転々とする間に、打者走者は一気に生還(記録はランニング本塁打)し、いきなり先制点を挙げている。草加南高はその後も左翼手の捕球ミス、内野手の悪送球など、3点を追加された。

 早大本庄高・福永泰規監督は試合後に「初回のあのプレーは、ウチにとってはラッキーだった。相手エースの岩元(葵、2年)君が良いボールを投げていたので、展開が変わっていたかもしれない」と汗を拭った。一方、草加南高・会田雄一監督は「ふだんはライト、レフトも積極果敢な守備をするんですが、まさか、ああいうプレーが出るとは……。やってやるぞ! という気持ちが緊張につながってしまったかもしれない」と唇をかんだ。

 主導権を握ったDシード(今春の県大会16強)の早大本庄高は四番・飯島周良(3年)の3ランなど打線がつながり、5回コールド(14対0)で初戦突破を遂げた。高校通算7号を放った主将・飯塚も、夏初戦の難しい「試合の入り」について、こう振り返っている。

「初回に点が取れたのが良かったです。自分は常に『好球必打』を心がけています。打ったのは低めの真っすぐ。甘かったので、手が出ました。狙いどおりのスイングができました。エースの齋藤を中心に、守りでリズムがつかめた。良い試合運びができたと思います」

 味方の援護に右腕エース・齋藤成輝(3年)は持ち味のテンポの良い投球で、4回3安打無失点と着実にアウトを積み重ねた。5回は183センチの長身右腕・石田将基(3年)が締めた。福永監督は「春から齋藤が投げると安定する。飯島のリードが良く、特徴を引き出してくれているのが大きい。とはいえ、齋藤頼みにならないようにと、石田も良い投球をしてくれた」と手応えを口にしていた。

クレバーな右腕エース


 主戦の齋藤は今春の県大会2回戦で、昨秋の県大会8強進出のシード校・川越東高を相手に、8回4安打1失点で8回コールド勝利(8対1)。1999年以来、2度目のシード権を獲得した立役者の一人である。

「自分は球速がないので、ストライク先行で変化球を織り交ぜて、打たせて取ることに徹しています。バックを信頼しており、守りから攻撃につながる投球を目指しています」

 この日はストレートを軸に、走者を背負った際には、カーブでタイミングを外した。持ち球はカットボール、シュート、スライダー、ツーシームと豊富で「打者の手元で動く系」を得意としているが、初戦はこれらを封印。3回戦以降、試合展開によって使い分けていくプランがあるという、クレバーな投手だ。

 あくまでも、攻め続ける。チャレンジャー精神は不変だ。齋藤は力強く語る。

「シード校という気持ちはなく、目の前の相手に対して、全力で立ち向かっていくだけです。この夏の目標は、ベスト8以上です」

 早大本庄高の最大の武器。主将・飯塚は「1年生から3年生まで30人。学年関係なく、まとまりのあるチーム」と胸を張る。埼玉大会の登録選手は20人。三塁ベンチには、背番号21のユニフォームが掲げてあった。福永監督によれば、ベンチに入れなかった控え部員、OB、保護者のほか、応援してくれるすべての関係者への思いが詰まっているという。

「ピンチのときに見れば、あきらめずに頑張ろう! という気持ちになる」(福永監督)

 埼玉大会は2回戦まで無観客試合。関係者しか入場できない中、三塁側芝生席には應援部(リーダーパート、チアリーダーパート)が太鼓と拍手のみで、統率力のある応援を繰り広げていた。3回戦以降は有料有観客試合。早大本庄高の夏は、始まったばかりである。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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