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伊原春樹コラム

まさにライバル! 巨人が3連覇を遂げたのは落合ドラゴンズという存在があったからこそ【001】/伊原春樹コラム

 

月刊誌『ベースボールマガジン』で連載している伊原春樹氏の球界回顧録。2021年3月号では落合ドラゴンズに関してつづってもらった。

落合監督にあったはずのロッテ時代の苦い記憶



 私は2007年から10年まで巨人ヘッドコーチを務めたが、落合ドラゴンズとは毎試合、息詰まる接戦を繰り広げた記憶がある。それはやはり、中日がディフェンス力に優れていたチームだったからだ。現役時代、通算2371安打、510本塁打、1564打点をマークした落合博満監督。三冠王に3度輝くなど球界屈指の大打者だったが、なぜ守備に重きを置くチームを作り上げたのか。それは、現役時代の苦い記憶から学んだことだと思う。

 1979年、ドラフト3位でロッテに入団した落合監督だが、初めて三冠王を獲得した82年に優勝したのは西武だった。落合監督はさらに成績を伸ばし、85年には打率.367、52本塁打、146打点、86年には打率.360、50本塁打、116打点と圧倒的な数字で三冠王に輝いたが、それでも優勝は西武にさらわれた。ロッテは85年2位、86年4位。いくら自分が打っても黄金時代の幕が開いた西武にかなわない。最も差を感じたのはディフェンス力だっただろう。例えば85年、ロッテは西武の.2715、655得点を上回るチーム打率.287、720得点をマークしていた。一方でチーム防御率は西武の3.82を大きく下回る4.80。落合監督は86年限りでロッテを去り、中日へ移籍したが、この“原体験”が指揮官となった際に大きく影響したのは間違いないだろう。

 中日監督就任直後に行われた週刊ベースボールのインタビューでも、それを裏付けるような問答があった(2003年10月27日号)。新外国人の獲得を見送ったという話を受け、落合監督は次のように答えている。

「確かに、現有戦力でどうしても優勝を狙えるだけのものがないと判断すれば、外国人なりトレードなりで補強することを考えたかもしれない。しかし、中日にはそれだけの素材がそろっているんだから、何もリスクを冒したり、大切な素材を交換要員にする必要はないだろう、と。まずは自分たちの足場をしっかりと固めていくことですよね。考えてみてくださいよ。アレックスの今季の成績は打率.294、21本塁打、65打点だった。助っ人にしては物足りないという人はいるかもしれない。でも、あの強肩がディフェンス面でどれだけ貢献してくれたか。アレックスと福留孝介の右中間は、プロ球界随一のレベルと言っても過言ではない。そんな助っ人を1年目で帰してしまう手はないと思う」

解説者時代に交わした言葉


 助っ人の打撃力ではなく、守備力に目を向ける。これは落合監督の野球観を端的に表していると思う。そういえば、私が2002年、西武の監督を務めていたとき、解説者だった落合監督とグラウンドで言葉を交わしたことがあったが、よく言われたのが「今やっているチームづくりは決して間違いではないですよね」ということだった。私は95年から01年まで指揮していた東尾修監督からチームを引き継いだわけだが、黄金時代のような緻密な野球を再びチームに植え付けようと考えていた。結果的に選手の頑張りもあり、02年は90勝を挙げてリーグ優勝をしたのだが、このときの西武は落合監督の趣向に合ったチームであったのだ。

写真=BBM
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