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出塁率チームトップ 阪神・マルテに「もっと評価されていい選手」の声が

 

「本当に嫌なバッター」


三番として阪神打線を牽引しているマルテ


 崖っぷちに追い込まれた阪神が底力を見せつけた。7月12日のDeNA戦(甲子園)で3点差を追う9回二死から5連打で4得点を奪い、劇的なサヨナラ勝利を飾った。試合後に矢野燿大監督は目を潤ませ、「苦しかったですけどね。本当に一人ひとりが……ちょっと待ってください」と声が震えて数秒間の沈黙。その後に、「全員の気持ちだと思います」と選手たちを称えた。

 勝負を決めるサヨナラ打を放ったのは四番の大山悠輔だが、三番のジェフリー・マルテの同点適時打も大きな価値がある。1点差に詰め寄り、9回二死一、三塁の好機で1ボール2ストライクと追い込まれたが、三嶋一輝の154キロ直球を中前にはじき返す殊勲打。サヨナラのときは大山に駆け寄ると、満面の笑みで頭を叩いた。大山の打撃不振で四番は固定できていないが、三番のマルテは揺るがない。首位を走るチームに不可欠な助っ人だ。

 開幕前は一軍の外国人枠を確約された立場ではなかった。昨年は29試合出場で打率.252、4本塁打、14打点。左ふくらはぎの故障でファーム暮らしが長かった。昨季韓国リーグで打率.349、192安打、47本塁打、135打点で本塁打王、打点王の打撃2冠、シーズンMVPを獲得したロハス・ジュニアが新戦力として加入。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う入国制限により、開幕後の4月上旬に来日したが、もし例年のように春季キャンプからチームに合流できていたら、助っ人たちの立場は変わっていたかもしれない。

 ただ、マルテに関しては「故障さえなければ打つ」という見方が少なくなかった。今季84試合出場で打率.284、16本塁打、46打点。得点圏打率.338と勝負強く、出塁率.400はチームの中で断トツのトップだ。他球団のスコアラーは「本当に嫌なバッター」と分析する。

「ほかの外国人と違い振り回さずにボール球をきっちり見逃す。選球眼がいいんですよね。2ストライクと追い込まれても、難しい球をファウルにしたり簡単に凡退しない。甘いところに入ったら長打もあるので抑えるのが困難です。昨年は大山、今年は佐藤輝明が脚光を浴びていますが、阪神打線の核になっているのはマルテです。もっと評価されていい選手だと思いますね」

外角の変化球の見極め


3年目を迎え相手の配球もうまく読んで打っている


 マルテの強みは対応能力の高さだ。メジャー通算30本塁打の実績を引っさげて、阪神に入団したが、来日1年目の19年は変化球中心の日本野球に対応できず、5月中旬まで打率2割ギリギリと低空飛行が続いていた。このまま終わってしまう外国人も少なくない中、マルテは親交の深いDeNAのネフタリ・ソトの助言もあり、我慢強くボール球を見逃すようになった。空を切っていた外角に逃げる変化球を見極められるようになり、甘く入った球を仕留められるようになると打率が上昇した。105試合出場で打率.284、12本塁打、49打点。故障さえなければ、日本で結果を残せるという根拠はこのシーズンの打撃内容が証明していた。

 来日3年目で相手バッテリーの配球の傾向も読めるようになり、本塁打も格段に増えている。本塁打後にベンチ前で選手たちと共に弓を引くポーズの「ラパンパラ」は阪神ファンのみならず、野球ファンの間でも大人気に。チームにもすっかり溶け込んだナイスガイは、16年ぶりのリーグ優勝に向けて打ち続ける。

写真=BBM
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