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今夏限りで監督がユニフォームを脱ぐも…甲子園出場へ死角が見当たらない東海大相模

 

タテジマの誇りを胸に


東海大相模高・門馬敬治監督は今夏限りでタテジマのユニフォームを脱ぐ。「相模ブルー」への愛着は人一倍である


 東海大相模高には「あるある」が存在しない。

 春3度、夏2度の甲子園制覇へ導いた門馬敬治監督は自身の体調への不安などを理由に、今夏限りでの退任を表明している。

「よくある」ケースでは、ユニフォームを脱ぐ指揮官に「男の花道」を飾ってもらうため、選手たちが一致団結する。東海大相模にはそうした「特別感」はまったく、門馬監督も選手からのそうした「思い」を望んでいない。

 最速146キロ左腕・石田隼都(3年)は「監督は最後ですが意識せず、目標は日本一。そこだけを目指している」と淡々と語る。秘めた「思い」はあるにせよ、目の前の戦いに集中する構えを崩さない。頼もしいエースだ。

 神奈川県相模原市内の同校敷地内にある専用球場へ行けば「答え」がある。きれいに整備されたグラウンド。キビキビと動く部員たち。夏の神奈川大会前も、基礎基本の反復。ここで鍛錬を重ねる日常が「いつもどおり」のプレーを生む。つまり、試合のための練習。取り組んできたことを、実戦で発揮するだけであり、公式戦は特別ではないことが分かる。

「甲子園決勝、神奈川大会決勝、夏の初戦。いずれも、特別な日にしたくない。特別な試合にしたくない。毎年、3年生にとって最後の夏になりますが、特別な大会にしたくない。いつもどおりに、この1試合を全力で勝ち切るか。次の道へとつなげていくことに徹する。トーナメントの高校野球では大事なことです」

 東海大相模高は今春のセンバツで10年ぶり3度目の優勝。このタイミングでの退任に、周囲の反響はあまりに大きかった。しかし、門馬監督は「いつもどおり」と強調した。

「授業もやりましたし、試験、試験監督もやりました。採点も、成績もつけました。いつもどおりの夏の大会の入りをしました。選手たちも成長していると思う。変わることがあってはダメ。朝起きてからの生活も、彼らとの関係も変わらずに……。特別になると、難しくなるんですよ。僕らは簡単にやりたい」

 横須賀大津高(7月17日)との3回戦を2戦連続コールド勝ち(12対1)で、4回戦進出。2019年春からの県内公式戦連勝を43に伸ばした。目指すは一つ。史上9度目(8校目)の春夏連覇である。神奈川勢では、1998年の横浜高しか遂げていない偉業である。

「県大会7試合、甲子園6試合。13個のハードルがある。一つひとつ、勝ち上がっていく中でそのハードルは高くなる。相手よりも自分との戦い。データも生かすのも、自分自身がしっかり準備できているかにかかっている」

 19年春から続く、7季連続県制覇(20年夏の独自大会を含む)まであと5勝。目指すは恩師・原貢元監督から指導を受けた「アグレッシブ・ベースボール」。攻守に攻め続けるスタイルが「相模の野球」と、こだわり続ける。門馬イズムが、選手たちにも浸透。相模ブルーに、タテジマの誇りを胸に戦いへと挑む東海大相模高に、死角は見当たらない。

文=岡本朋祐 写真=菅原淳
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