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阪神・首位ターンの陰のMVP 中野拓夢「僕も鳥谷選手のような選手になりたい」

 

ドラフト6位で入団ながら



 貯金15で13年ぶりに前半戦首位ターンを決めた阪神。4球団競合によるドラフト1位で獲得した佐藤輝明が新人左打者で歴代1位タイの20本塁打に早くも到達、2位の伊藤将司も先発ローテーションで稼働し、5勝5敗、防御率2.70と奮闘している。

 そして、この男の貢献度も佐藤、伊藤に負けていない。ドラフト6位で加入した中野拓夢だ。76試合出場で打率.278、1本塁打、17打点。リーグ3位の16盗塁をマークし、失敗は1つのみと成功率は94.1パーセントを誇る。足が速いだけでなく、走塁技術も高い。盗塁王は十分に狙えるだろう。前半戦の活躍が認められ、プロ1年目にファン投票で球宴初出場を果たした。

 リーグワーストの13失策と遊撃の守備では改善の余地が見られるが、再三の好守でチームを救ってきたのも事実だ。中日時代に遊撃で守備の名手として知られた井端弘和氏は、週刊ベースボールのコラムで中野の守備を高く評価している。

「彼を初めて見たのは昨年の夏、社会人時代のことでした。私が臨時コーチをしているNTT東日本と三菱自動車岡崎が名古屋でオープン戦をしたのですが、一目見ただけで動きの良さを感じました。フットワークはとても重要で、良いショートとなるための条件とも言えます。技術的に『うまい』か『うまくない』かで言えば、現段階では『普通』。ただ、捕ること、投げることは一定以上で、飛んできた打球は無難にアウトにすることができます。これ、当たり前のようで、当たり前にできない選手もいますから、大切なことなんですよ。アウトを確実にとってくれる選手は首脳陣としても計算しやすく、そういう意味でも、中野選手は十分にレギュラーを任せられるレベル。これからプロの試合で実戦を積んでいく中で、駆け引き、ポジショニングを含め、技術面も高めていくことができると思います」

 社会人・三菱自動車岡崎の時から俊足を生かした広い守備範囲に定評があったが、送球に課題があった。そこで、2月の春季キャンプで川相昌弘臨時コーチから送球の際のステップで指導を受けたことで大幅に改善された。

 中野は週刊ベースボールのインタビューで、「僕自身、プロに入る前まで送球のときのステップが小さかったんです。川相臨時コーチに『捕ってからのステップを大きくすれば、その分、送球するほうもラクになる』と言われましたので、それを実践しています」、「投げるときのボールへの力の入り方や、送球の正確性がまったく違いました。守備は小さいことの積み重ねなので、そういうことをひとつずつクリアしていくことで、今の自信につながっています。またまだ勉強することも多いので、ほかのチームの守備のうまい選手のプレーを見て、いいところは盗んでいきたいなとは思います。それと同時に、肩の強さなどを求めていきたいと思っています」と守備への飽くなき向上心を語っている。

「体の強さがすごいな、と」


遊撃守備でさらなるレベルアップを図っていく


 中野には目標とする阪神OBのレジェンドがいる。現在はロッテでプレーする鳥谷敬だ。

「遊撃手のレギュラーとしてずっと試合に出続けていた選手で、その体の強さがすごいなと感じていました。もちろん走攻守そろった選手なので、僕も鳥谷選手のような選手になりたいな、と思っています。実際にお会いしたことはないのですが、交流戦で実際に守備を見て勉強させてもらいました」

 東北の山形出身。寡黙だが芯の強い性格は鳥谷と相通じる部分がある。球界を代表するショートストップへ。中野はその可能性を十分に秘めている。

写真=BBM
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