週刊ベースボールONLINE

HOT TOPIC

昨季の絶不調から復活 DeNA・山崎康晃は「侍ジャパンの救世主」になれるか

 

守護神の座をはく奪された昨季



 昨年に開催予定だった東京五輪が今年7月に延期されていなければ、侍ジャパンに名を連ねることはなかっただろう。DeNA・山崎康晃だ。

 守護神としての実績は申し分ない。新人の2015年に新人最多記録の37セーブを挙げ、18、19年は2年連続最多セーブを獲得。19年に通算150セーブを史上最年少の26歳9カ月で達成した。直球と落差の鋭いツーシームが投球の大半を占める投球スタイルで、「ツーシームは分かっていても打てない」と相手打者が白旗を上げるほどだった。スタンドに詰めかけたファンが登場曲『Kernkraft400』に合わせながら、「ヤスアキジャンプ」で送り出す光景は山崎の代名詞に。侍ジャパンでも守護神を担い、19年11月の「プレミア12」では5試合計5回無失点、3セーブと完ぺきな働きぶりで世界一に貢献した。

 東京五輪はDeNAの本拠地・横浜スタジアムで決勝戦が行われる。慣れ親しんだマウンドで大きな歓声を背に受け、金メダルと胴上げ投手になることを目標に掲げていた。昨年は新型コロナウイルスの影響で開幕が3カ月延期に。山崎は開幕を控えた6月に週刊ベースボールのインタビューで、「プロでは初めてですし、それこそ小学生でスタートした僕の野球人生でゴールデンウイークを初めて感じましたから。それだけイレギュラーなシーズンなんだと思います。でも、誰もが同じ条件でシーズンはスタートするので、日程を言い訳にはできません。6月19日までにしっかりと調整して、ケガなく開幕を迎えたいと思います」と意気込みを口にしている。

 さらに、「9回のマウンドに上がって、相手をねじ伏せてゲームセットを迎える。そしてウイニングボールを勝利投手や監督に手渡す場面はイメージできています。それこそが僕の仕事であって、今シーズンもまっとうしたいです。そして、常にチームを引っ張っていく存在でありたいと思っています」と守護神としての強い自負を語っていた。

 ところが、待ち受けていたのは想像すらできなかった試練だった。7月26日の広島戦(横浜)で5失点を喫するなど不安定な投球が続き、失点する場面が増加。守護神の座を三嶋一輝に明け渡し、故障以外で初めて二軍降格を味わった。40試合で0勝3敗6セーブ、防御率5.68。3年連続セーブ王、史上最年少での通算200セーブにも届かなかった。

投球スタイルに手を加え復調


今季はセットアッパーとして徐々に調子を取り戻した


 プロの世界は厳しい。絶対的守護神の立場は1年も経たず変わっていた。今年は昨季の不振を考慮されて春季キャンプを二軍で過ごし、オープン戦出場もなし。一軍に呼ばれたのは開幕まで1週間を切った時期だった。三浦大輔監督に与えられた役割はセットアッパー。復調を信じて我慢強く起用された昨年と違い、結果を残さなければファームに落とされる。直球とツーシームのコンビネーションで抑える投球スタイルに手を加えた。中間的な球速のスプリットを新たに習得。近年挑戦を試みてきたスライダー系の球種も効果的に混ぜている。投球の引き出しを増やし、マウンドに戻ってきた山崎は3勝1敗18ホールド、防御率2.37と好成績で前半戦を終えた。

 相手に威圧感を与え、三振の山を築いた守護神のときと比べると、まだまだ物足りなさは否めない。だが、侍ジャパンで東京五輪の内定メンバーに選出されたことは大きな自信になるだろう。どん底を経験し、精神的にタフになった。西武平良海馬、広島・栗原良吏など守護神として活躍する若手たちが初選出されたが、国際試合のマウンドは独特の雰囲気がある。山崎はどのポジションを託されるか。修羅場を潜り抜けた経験が世界一に向けて必要なことは、間違いないだろう。

写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング