週刊ベースボールONLINE

高校野球リポート

昨秋は2回戦、今春は1回戦敗退。ノーシード・帝京は10年ぶりの夏の甲子園出場なるか?

 

下級生を積極的に起用


帝京高を率いる前田三夫監督は甲子園通算51勝を誇り、春1度、夏2度の全国優勝へ導いた名将。10年ぶりとなる夏の甲子園出場へ、ボルテージは高まるばかりだ


 1989年、95年夏と2度の全国制覇(春のセンバツは92年に優勝)を誇る帝京高は2011年夏を最後に、甲子園から遠ざかっている。

 昨年は新型コロナ禍により、全国大会と地方大会が中止。帝京高は東京都高野連主催の独自大会(東東京)を制した。9年ぶりの夏王者も、甲子園にはつながらなかった。新チームは先輩たちの思いも背負ってスタートしたが、秋は東京大会2回戦、春は同1回戦敗退。今夏の東東京大会はノーシードで迎えた。

 甲子園通算51勝の帝京高・前田三夫監督は屈辱的な春の敗退を経て、舵を切った。

「冬場を通して、体も大きくなりました。最上級生は一生懸命、課題に取り組んでくれました。だからこそ、この春『もう1回、やってみろ!』と送り込んだんですが……」

 3年生の意地に託したものの、結果が伴わなかった。「練習試合で力が発揮できても、公式戦になると、プレッシャーなのか……。活性化させないといけない」。指揮官はこの夏、下級生を積極的に起用。5回コールド勝利(17対0)を飾った昭和第一高との東東京大会3回戦(7月18日)も、2年生以下が5人先発した。初戦(2回戦、対淑徳巣鴨高、10対0の6回コールド)と3回戦は、1年生右腕・高橋蒼人が先発して試合を作った。2試合を通じて2年生右腕・大塚智也が好救援し、2回戦でリリーフしたエース右腕・安川幹大(3年)も控える。投手陣は2試合連続無失点と、充実した投球内容が続く。

 攻撃面では「つながる打線をつくりたい」と前田監督。もちろん、3年生も最後の夏への熱い思いがある。3回戦では四番・尾瀬雄大が豪快な右越え2ランを放った。

「主将の武藤(武藤闘夢)に任せきりだったので、自分たちも積極的に動いていこう、と。自分たちは弱い、と自覚して取り組んできました。野宮も良い声かけをしてくれています」

 1年夏からレギュラーで責任感の強い武藤を、ムードメーカーの副将・野宮夢咲(3年)と、尾瀬が支える形が出来上がりつつある。

大量リードでも集中力を切らさず


 緊急事態宣言などの影響により、春敗退以降、練習試合はわずか10試合しか消化できなかった。例年は5、6月に全国の強豪校と対外試合を組むが、都外への遠征は難しかったという。チーム内での紅白戦もあまり行わず、ひたすら基礎基本の技術練習とトレーニングに時間を割いたという。「淡白な野球では、勝負事では勝てない」と実戦形式のメニューでは、ワンプレーの精度を求めてきた。夏はスタミナ勝負。しっかりと体をつくってきた。

 昭和第一高との3回戦、15対0で迎えた4回裏、帝京高の攻撃。一死二塁からの一邪飛で二走・尾瀬がタッチアップで三塁へ進塁した。「次の塁を狙うことは、ずっとやってきたことです」。大量リードでも集中力を切らすことなく、アグレッシブな走塁に今夏、帝京高が求めるスタイルを確認することができた。

 前田監督は「(甲子園まであと5試合)まだ、先がある。気を抜かないでいきたい」と手綱を締める。尾瀬も分かっている。「秋、春ともすぐに負けたので、1試合でも多くやりたい。一番長い、夏にしたい」と、マスク越しからあらためて、決意を新たに。6月に72歳となった前田監督は試合前、ノックバットを握り、選手とのコミュニケーションを図る。白球への情熱は不変。名将が「帝京魂」を集約させて、10年ぶりの甲子園へと導いていく。

文=岡本朋祐 写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング