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高校野球リポート

甲子園まであと5勝の早実。1年生が力を発揮“シード校撃破”で充満してきた一体感のムード

 

「このチームは成長する余地がある」


早実の1年生・深谷空は佼成学園高との西東京大会3回戦(7月19日)でランニング本塁打。この試合は途中出場で「守りが武器」という遊撃手が、バットでチームの勝利に貢献している


 大会序盤のヤマ場だった。ノーシードで西東京大会を迎えた早実は、佼成学園高(第4シード)との3回戦を快勝(6対0)した。早実・和泉実監督は一塁ベンチで、得点が入るたびに大きなリアクションで選手の活躍を称え、誰よりも声を出し、テンションは最高潮だった。

「ヤマ場? オオヤマですよ(苦笑)。シード校で強い。好投手、打線も本塁打を打つ打者がいると聞いていましたので……。初回に点が取れた(1点先制)のが大きかった。先発の石島(光騎、2年)がよくほうってくれた(8回途中無失点)。上級生と下級生の力が融合して、このチームは、成長する余地がある」

 昨秋は東京大会8強進出も、今春は1回戦で2019年夏の西東京大会の代表校・国学院久我山に惜敗(1対4)した。どこの学校も事情は同じで、新型コロナ禍において、早実も対外試合が思うように組めなかった。「正直、(戦力を)掌握しきれていない。調子の良い選手を使っている」と、手探りの中で夏を迎えた。

 春の都大会敗退時に、和泉監督は「ガラガラポンでいくしかない」と語っていたが、その言葉のとおり、メンバーは大きく入れ替わった。登録20選手のうち、1年生5人がベンチ入り。佼成学園高との2回戦では、捕手・江崎大耀、二塁・箭原裕太郎、遊撃・山本蒼空と3人の1年生が先発出場した。江崎は強気のリードで引っ張り、箭原は堅守、ソフトバンク山本省吾スカウトを父に持つ山本はパンチ力のある打撃が武器。この日は、5回表の守りから山本に代わって、こちらも1年生・深谷空が入った。中盤以降の守備力が期待されての起用も、4対0で迎えた5回裏一死二塁から中堅越えの大飛球。50メートル走6秒3の俊足を飛ばして一気に生還し、決定的な2点を挙げた(記録はランニング本塁打)。大成高との初戦(2回戦)では右腕・齋藤士龍が救援登板しており、1年生がチームを活気づけている。

 早実の歴史をさかのぼれば1980年夏、1年生エース・荒木大輔(現日本ハムコーチ)が台頭し、甲子園準優勝。2015年夏は清宮幸太郎(現日本ハム)が打線をけん引して、甲子園4強。早実はかねてから先輩と後輩の関係性において、風通しが良い。下級生が力を発揮しやすい雰囲気が、伝統として根づいている。

主将・清宮への思い


 深谷は試合後にこう明かした。伸び伸びと動ける一方で、特別な感情もあるという。

「1年生からベンチ入りできたのはうれしい気持ちもありますが、3年生のためにプレーしています。ユニフォームを着られなかった3年生が応援してくれる。3年生を勝たせたい」

 とにかくチームの勝利のため、身を粉にする主将・清宮福太郎(3年)への思いもある。

「エラーしても良いから思い切りプレーしてほしい、と。声も人一倍出しており、チームの士気が上がる。頼りになるキャプテンです」

 和泉監督も手応えを口にする。

「1年生は非常に1年生らしく、気持ち良くやっている。上級生が、そうさせている」

 前回、甲子園に出場した15年夏の西東京大会でも聞いた指揮官のコメントである。夏本番まで練習試合の機会は少なかったが、公式戦の1試合こそが、レベルアップの場。和泉監督はシード校撃破で、好感触を得た。甲子園まであと5勝。83人の全部員が目標に向かってまい進する、早実らしい一体感あるムードが充満してきている。

文=岡本朋祐 写真=矢野寿明

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