将来を見据えて登板を回避
八王子高の149キロ左腕・羽田慎之介は今夏、1球も投げることなく、西東京大会5回戦(7月25日)で敗退した
2対3で迎えた9回裏二死一、二塁。背番号1を着ける八王子高・羽田慎之介(3年)は代打で今大会初出場した。左打席から快音を残したものの中直に倒れ、試合終了。西東京大会5回戦(対狛江高、7月25日、八王子)で敗退した。
左ヒジに故障を抱えていたことから1球も投げず、最後の夏を終えた。大会前には「プロ志望」の意向を示していたが、この日は進路について明言しなかった。無理もない。エースとして、役割を果たせなかった無念がある。
主戦となった昨秋。富士森高との1回戦、国士舘高との2回戦はともに8イニングを投げ、日大鶴ケ丘高との3回戦は1失点完投勝利。ここで、体に悲鳴が上がる。左ヒジの骨膜炎により、準々決勝(対関東一高)の登板を回避(チームは0対7で敗退)していた。
八王子高・安藤徳明監督との話し合いにより11、12、1、2月とほぼボールを握らず、体づくりに充てた。体幹トレ、ウエート、走り込みを継続し、今年3月以降にキャッチボールを再開。当初は春の東京大会で復帰する予定はなかったが、体重8キロ増(86キロ)で下半身主導のフォームが確立。7〜8割、20球以内、スライダーとカットボールは封印(変化球はチェンジアップのみ)の条件で登板した。
小平西高との1回戦で自己最速を2キロ更新する146キロ、専大付高との3回戦では149キロ。一躍、ドラフト候補に浮上した。夏へ向けて、慎重に調整を進めてきたが、本来の姿を披露できなかった。安藤監督はドクターと相談の上、将来も見据え、5回戦までは登板を回避。この日を勝ち上がれば、準々決勝以降で投げる予定があったという。
羽田は大会前に「甲子園で勝つことが目標です!」と2016年以来、2回目の全国舞台へ導くつもりだったが、マウンドで躍動することはできなかった。
今春の段階で、複数のNPBスカウトの評価は「ドラフト上位候補」。今大会期間中、あるスカウトからも「(ドラフト)3位以内で消える素材」との声を聞いた。191cm左腕は「和製
ランディ・ジョンソン」の異名があり、潜在能力の高さに、プロ関係者は太鼓判を押す。
果たして、どのような道を選択するのか。17歳・羽田の決断から目が離せない。
写真=矢野寿明