週刊ベースボールONLINE

高校野球リポート

6試合で77得点、5失点。横浜が圧倒的な強さで3年ぶり決勝進出を果たした理由は?

 

「力を結集させて臨んでいる」


就任2年目の横浜高・村田浩明監督。神奈川大会で、2018年以来の決勝進出へ導いている


 3年ぶりの甲子園出場へ、神奈川の名門・横浜高が夏の頂点まであと1勝とした。

 準決勝(7月26日、保土ヶ谷)の相手は藤沢翔陵高。同校は準々決勝で東海大相模高が出場辞退(登録選手17人が新型コロナウイルス感染)したため、不戦勝により、4強へ駒を進めている。横浜高は初回に打者1巡(9人)の猛攻で5点を挙げると、2回にも3点を追加。序盤で主導権を握ると、7回コールド(9対1)で3年ぶりの決勝進出を決めた。

 とにかく圧倒的な強さを発揮している。鎌倉学園高との4回戦(3対0)を除いて、5試合がコールド勝利。6試合で77得点に対して、5失点と、攻守でスキを見せていない。

 なぜ、ここまで圧倒できるのか。2つの理由がある。

 1つ目は、2つの敗戦から得た教訓である。

 昨秋は東海大相模高、そして今春は桐光学園高との準決勝で、ともに屈辱のコールド敗退を喫した。就任2年目の村田浩明監督は言う。

「秋はチームづくりができずに、春も選手のコンディションの部分でケガ人が出てしまった。今回の夏に向けてはしっかりチームをつくってきて『自信を持っていくぞ!』と話をしてきた。力を結集させて臨んでいる」

 甲子園出場をかけた昨夏の地方大会の中止に伴う、神奈川県高野連主催の独自大会はオール3年生で挑んだ。2019年9月末に前部長と前監督が退任。昨年4月に村田監督(同年3月末までは神奈川県立白山高校に勤務)が就任するまでは、高山大輝ヘッドコーチが監督代行としてチームを守った。

「監督不在」という難しい時期を過ごした最上級生だけに、村田監督は「横浜高校で野球をやっていて良かったと思えるように」と、夏までは、3年生と向き合う時間を優先した。

 秋へ向けた2年生以下も、同時進行で強化していたが、村田監督が本格的に指導するようになったのは、8月下旬の新チーム結成以降。9月には秋季県大会が開幕。すべてを掌握するには、時間が足りなかったという。春の敗退を経て、ようやく、機が熟したのである。

 2つ目の勝因は、ライバルの存在が大きかった。今春のセンバツ優勝校・東海大相模高は2019年春から今春まで、6季連続で県大会優勝。今大会の準々決勝で出場辞退まで県大会45連勝と、実力校がひしめく激戦区・神奈川においても頭一つ抜けた存在だった。

「このままでは甘い。彼らも本気になってくれましたし、東海大相模さんがいたから、横浜高校と私が変わるチャンスをいただけたんです」

準決勝の朝に恩師から電話


 村田監督の母校愛はものすごい。名門再建へすべてを捧げるつもりで、母校へ戻ってきた。この熱血漢に対して、ストップをかけた人物がいた。準決勝の朝、電話が入ったという。

「ガツガツ、やり過ぎるな!!」

 声の主は渡辺元智氏(横浜高元監督)だった。

「周りを見て、選手を落ち着かせて、やらせろ、と。そのアドバイスが利きました。恩師がつくられた横浜高校野球部。何とかこの子たちを、甲子園へ連れていきたい思いが強い」

 心は熱く、頭は冷静に。試合が終われば、すぐに次戦へと切り替える。それが、トーナメントの鉄則である。明日(27日)が決勝(対横浜創学館高)の予定だったが、台風8号の接近に伴い、1日の順延(28日、10時試合開始、保土ヶ谷)が決まった。村田監督は言う。

「何日空こうが、準備するだけ。選手とともに1回、リフレッシュをして、次の戦いへ向けて全力でいきます。あと1つ? そういう感覚はなく『一戦必勝』です。1試合、1試合を勝って、成長していこう、と。勝ち続けるのが目標。決勝だからと言って、特別なことをするのではなく、やってきたことをいかに出すか。次の準備をこれからしたいです」

 横浜高は試合後の取材対応を終え、活動拠点である長浜グラウンドへ引き揚げると、そのまま練習に入る。夏の県大会以降、継続しているルーティンだ。もちろん、疲れはあるが、その日に出た課題は、その日のうちに確認し、修正に努める。渡辺元監督の座右の銘である「目標がその日その日を支配する」を実践しているのだ。村田監督は主役である部員との時間を、大切に過ごしている。

写真=矢野寿明
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング