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背番号物語

【背番号物語】楽天「#21」21勝で最多勝の岩隈久志が初代。現役の早川隆久がエースナンバーに成長させる?

 

近鉄の栄光をつないで


楽天の初代背番号「21」だった岩隈


 プロ野球でエースナンバーといわれるのは「18」。田中将大が背負う楽天も同様に見えるが、「18」の初代だった左腕の渡邉恒樹は左腕エースの背番号というイメージが強い「34」に変更してセットアッパーとしてブレークしており、楽天の「18」で輝いているのは田中1人だ。これに関しては楽天の「18」を紹介した際に詳しい。言葉遊びのようになるが、エースのナンバーということなら「18」も申し分ないが、エースがリレーするという意味でのエースナンバーということになると、「18」は分が悪い。2005年に誕生して、この21年で創設17年目という楽天の歴史が他のチームに比べて短いことも「18」には逆風といえる。

現在はドラフト1位ルーキーの早川が「21」を着ける


 そんな楽天にあって、エースナンバーの系譜が生まれつつあるように見えるのが「21」。この21年に「21」を背負うのは、早大からドラフト1位で入団した新人の早川隆久だ。初登板初先発初勝利と幸先の良いスタートを切った左腕は、5月には初完封でパ・リーグ一番乗りの5勝目。開幕から快進撃を続ける楽天の起爆剤となり、勝ち越したまま現在に至っている。歴代で「21」を背負ったのは3人のみだが、早川の前に「21」を着けた2人が、ともに一定の期間を「21」で過ごし、一定の結果を残していることも、「21」にとっては追い風といえそうだ。

【楽天】主な背番号21の選手
岩隈久志(2005〜11)
釜田佳直(2012〜20)
早川隆久(2021〜)

 初代は右腕の岩隈久志だ。岩隈については近鉄の「21」を紹介した際にも触れているが、近鉄がオリックスと合併する形で“消滅”したことで誕生したのが楽天。21世紀とともに近鉄の「21」となり、その歴史が終わるまで背負い続けたのが岩隈だった。なお、近鉄の「21」も柳田豊吉井理人が歴代に並ぶ好投手の系譜。岩隈は近鉄ラストイヤーとなった04年に15勝で最多勝に輝いて、近鉄の歴史で有終の美を飾った。「21」を通して、近鉄の栄光を楽天でつないだのが岩隈ということもできるかもしれない。だが、それほど簡単な話でもない。04年から05年にかけての球界再編も激動だったが、岩隈も、そして「21」も大いに翻弄された。

どん底の楽天、受難の岩隈


 04年オフ、近鉄の選手は分配ドラフトでオリックスと楽天に所属することになり、岩隈はオリックスにプロテクトされるも、近鉄への愛着から既成のオリックスに入団することを拒否。紆余曲折を経て、最終的に楽天へ金銭トレードされる形で楽天の初代「21」となる。ただ、これは受難の序章に過ぎなかった。

 迎えた05年。創設1年目の楽天は戦力が整わず、かろうじて100敗は免れたものの、38勝97敗1分と大きく負け越し、首位と51.5ゲーム差という悲惨な結果に。9勝を挙げるなど健闘した岩隈も前年の最多勝から一転、リーグ最多の15敗を喫した。翌06年には二段モーションが禁止され、左足を上下させる二段モーションだった岩隈はフォーム改造を余儀なくされる。これでバランスを崩した岩隈は故障に見舞われ、その06年は1勝に終わった。楽天も47勝85敗4分で首位と33ゲーム差、2年連続の最下位に沈んだ。岩隈は翌07年も5勝にとどまったが、そのオフに右ヒジを手術して万全を期すと、迎えた08年には完全復活。背番号と同じ21勝を挙げて2度目の最多勝、防御率1.87で初の最優秀防御率の投手2冠に。楽天は5位だったが、岩隈はMVP、沢村賞にも輝いている。

 翌09年は第2回WBCで世界一に貢献も、その疲労もあって再び右ヒジ痛。それでも後半戦には復活して楽天を初のCS進出に導いた。東日本大震災で東北が甚大な被害を受けた11年は故障もあって6勝に終わったが、オフにFAでマリナーズへ。その後も故障とは無縁ではなかったが、メジャーでは3度の2ケタ勝利、通算63勝を残した。

楽天2代目の背番号「21」は釜田だった


 岩隈から「21」を継承し、この21年からは「41」を背負う釜田佳直が現時点では歴代の最長となる。ドラフト2位で12年に入団して、1年目から20試合に登板して7勝を挙げるも、翌13年からは故障に苦しみ、16年には復活の7勝を挙げたが、その後も故障が続いた。「21」で本領を発揮したとは言い難い釜田だが、故障と復活を繰り返した岩隈の後継者であることは事実。背番号は変わったが、このままでは終わらないはずだ。

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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