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背番号物語

【背番号物語】楽天「#11」初代は一場靖弘、現在は岸孝之のトレードマーク。やがては地元出身エースの系譜に?

 

チーム元年から大物ルーキーが背負うも


楽天の初代背番号「11」だった一場


 2005年に東北は仙台を本拠地に誕生した楽天。プロ野球チームの地域密着が加速する中、チーム名は東北楽天ゴールデンイーグルスとなった。ただ、この21年で16年目を迎える若いチームだが、地元の東北から入団した選手は決して多くはない。これを本拠地のある宮城県に限れば、より人数は少なくなってくる。もちろん、ドラフトの“壁”もあるから、希望枠や逆指名などがあった時期を除いて、地元の出身だからといって、地元の楽天に入団するためには運も必要だ。現時点では、ドラフトで他のチームへ入団することになったら、そこで実績を積んで、FAで楽天を目指すのが、もっとも手っ取り早い手段になるのかもしれない。

現在は移籍5年目の岸が「11」を着ける


 2017年から楽天の「11」を背負う岸孝之は貴重な宮城県の出身。「11」は一般的にチームを代表する投手のナンバーという印象があり、これについては過去に村山実が永久欠番にした阪神別所毅彦斎藤雅樹が着けた巨人などを紹介した際に詳しい。楽天では田中将大の代名詞となっている「18」が一般的にエースナンバーとされるが、投手ナンバーの筆頭格としては、投手ナンバーの10番台で1番目の数字ということもあって、「11」のほうが由緒があるといえる。これを地元も地元、宮城県の出身である岸が与えられた……ということであれば物語は単純だが、そう簡単なものではない。多くのプロ野球ファンにとっては釈迦に説法と思われるが、「11」は岸がプロ野球の選手として07年に入団した西武から一貫して背負い続けているナンバーだ。

 近年は投手の松井裕樹が「1」を着けるなど、独自路線の傾向も見せ始めている楽天だが、「11」は最初から投手ナンバー。初代はチーム最初のドラフトで、大騒動の末に自由枠で入団した一場靖弘だった。一場は明大で通算26勝を挙げた右腕。誕生したばかりの楽天には“消滅”した近鉄からも分配ドラフトで選手が加入しており、紹介したばかりの岩隈久志のように近鉄での背番号を楽天でも着け続けるケースが多かったが、近鉄で最後の「11」だった川尻哲郎は楽天では「19」の初代に。川尻にとって「19」はプロ入りした阪神で2番目に着けた背番号で、いわゆる“剥奪”ではないとはいえ、「11」を与えられた一場への期待が大きかったことも間違いない。

 だが、まだチームの戦力が整わない時期ではあったが、一場は4年で15勝にとどまり、09年の開幕を前にヤクルトへ移籍。一場はオープン戦までは「11」で投げており、この09年の「11」は欠番に。2代目となったのは、その6月にメジャーから復帰、「62」のクローザーとしてチーム初のCS進出に大きく貢献した福盛和男だった。

3代目から東北に近づいた?


2011年にドラフト1位で入団した塩見は「11」を着けたが、現在は「17」に


 近鉄の最後、そして楽天の初代「15」だった福盛が楽天の「11」を背負ったのは翌10年。だが、前年から右ヒジ痛に苦しんでおり、「11」で迎えた10年は5月に自身3度目の右ヒジ手術を受けるも、完治しないままオフに引退、「11」では2試合の登板にとどまった。

 その秋のドラフト1位で楽天から指名されて、続く11年から「11」の3代目となったのは左腕の塩見貴洋だ。塩見は大阪府の出身だが、地元の東北、青森県の八戸大からの入団で、1年目から即戦力となる。だが、17年にFAで岸が西武から加入したことで「17」に変更。この21年も「17」でプレーを続けている。

 一方、西武の「11」として通算103勝を積み上げていたのが岸だ。「18」の田中とはプロの同期で、パ・リーグの新人王を争ったが、岸は田中より4学年の上。田中のいない楽天へ加入して、移籍1年目は打線と噛み合わず勝ち星がつかない試合が多かったものの、2年目の18年は自身4年ぶり2ケタとなる11勝、防御率2.72で初の最優秀防御率に。精神的支柱としての存在感は21年も健在だ。

 岸の「11」は西武からの“輸入”ではあるが、楽天の「11」としては、地元の出身でもある岸の背中で、投手ナンバーの筆頭格という一般的な物語と合流したようにも見える。楽天と“同学年”の若者たちがドラフトの候補になる日も遠くない。地元の彼らが岸の背中を目指すとき、独特の物語が始まるのかもしれない。

【楽天】背番号11の選手
一場靖弘(2005〜08)
福盛和男(2010)
塩見貴洋(2011〜16)
岸孝之(2017〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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