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プロ野球はみだし録

自粛ムードもあった2011年のプロ野球。「誰かのために戦う人間は、強い」【プロ野球はみだし録】

 

統一球の影響で本塁打も激減……


統一球の影響で各打者が苦しむ中、2011年、48本塁打を放った中村


 10年前の2011年、開幕が3月25日から4月12日に延期されたプロ野球は、開幕10日前のチャリティーマッチで、楽天嶋基宏(現ヤクルト)が語った「見せましょう、野球の底力を」という言葉から幕を開けたといえるかもしれない。

 列島は自粛ムードに覆われていた。誰かに要請されたわけではない。多くの人が感情的に娯楽を享受することができなくなり、社会に重い雰囲気が醸成されていった。一方、首都圏で電力の供給が滞るおそれがあったことで、プロ野球には政府から要請が出される。プロ野球は試合で3時間半を超えて新しい延長イニングに入らないことを決定。開幕の延期により試合のスケジュールも変更され、楽天が敵地での連戦を余儀なくされたことは前回に紹介したが、首都圏に本拠地を置くチームもスケジュールを組み換えて、本拠地の試合もナイターをデーゲームにするなどの対応に追われた。

 グラウンドにも異変が起きる。まるで世の中の雰囲気を反映するかのように、打球が飛ばなかった。このシーズンから導入された統一球が原因だったが、当時は極端な“打低高投”の確固たる原因が分からず、重苦しい空気に拍車がかかったようだった覚えがある。ほとんどの打者が打撃に苦しむ中で、ほぼ関係なく打ちまくっていたのが、現在も現役を続けている西武中村剛也で、2位を大きく引き離す48本塁打王に。ちなみに、この2位もソフトバンクで現役を続けている松田宣浩の25本塁打だったが、どちらかといえば中距離ヒッターの松田も、中村の陰に隠れてはいるものの、統一球に“アジャスト”していたといえるかもしれない。ただ、中村や松田といった陽性のキャラクターばかりが打ちまくっていたことも、当時は不思議に感じられたものだった。

 ちなみに、本拠地の開幕戦で「見せましょう、東北の底力を」と語った嶋は、「誰かのために戦う人間は、強い」「絶対に勝ち抜きましょう、このときを」と続けている。自らも苦しい立場にあり、悩み抜いた末に絞り出した言葉だったことが伝わってきた。十年一昔というが、嶋の言葉もまた、遠い過去ではない。

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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