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日本人メジャーの軌跡

日本人選手“バブル絶頂期の象徴”松坂大輔。レッドソックスと大型契約/日本人メジャーの軌跡

 

メジャーにおける日本人選手の歴史にあって、2006年シーズン後の松坂大輔の移籍は一つのピークだったと言える。西武からポスティングシステムを利用したが、当時は最高の入札金を提示した球団が独占交渉権を得る仕組み。レッドソックスが松坂を落札したのは5111万1111ドル11セント。当時のレートで約60億円であった。日本選手で初めて同システムを使って移籍したイチローの落札額が1312万5000ドルで、ほぼ4倍である。

強気な交渉を展開したボラス


レッドソックス時代の松坂大輔


 日本人選手バブルの絶頂期であった。松坂自身「期待されているのはうれしい半面、プレッシャーもある」と語っていた。レッドソックスは、ライバルのヤンキースが松井秀喜を獲得して戦力としてはもちろん日本人ファンを呼び込んで経営上でも大きな利益をあげたことに刺激を受け、投資にふさわしい選手だと判断したのだった。

 もちろん松坂の実力が高く評価されたことは言うまでもない。日本では最多勝3度、最優秀防御率2度、最多奪三振4度。01年には沢村賞に輝いている。06年の第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では3勝0敗、防御率1.38でMVPに選出されていた。

 それだけに、スコット・ボラス代理人は強気な交渉を展開した。ボラス氏は辣腕として知られた人物。強気一点張りのスタイルで、アレックス・ロドリゲスとレンジャーズの10年契約などを実現。ボラス氏は野茂英雄やイチローの活躍で、日本人選手に興味を抱いた。超一流の日本人選手として松坂に注目し、クライアントに迎えたのだった。

 ボラス氏は「大輔には5年で1億ドルの価値がある」と言い、交渉に力を入れた。譲渡金も含め金額を考えたいレッドソックス側とは、最初から難航が予想された。交渉に与えられた期間は1カ月だがなかなか折り合うことがなく、一時は決裂の可能性まで取り沙汰された。日本ではスポーツニュースのみならず、ワイドショーでも大々的に取り上げられるほど、国民的関心に。交渉期限はアメリカ東部時間の12月15日午前0時。合意は14日にぎりぎり。松坂自身が条件よりもレッドソックス入団を第一とするよう希望したという。結局6年総額5200万ドルだった。

 本拠地フェンウェイ・パークで行われた入団発表には日米合わせて約400人の報道陣が集まった。ここで「ずっとここ(メジャー)で投げることができると信じて、目標としてやってきた。信じてやってきたからここにいる」と力強く発言した。セオ・エプスタインGMは「今日はレッドソックスにとって非常に重要な日になった。なにせ日本の国宝とサインしたのだから」と笑顔を浮かべていた。まさに鳴り物入りでの入団となった。

『週刊ベースボール』2021年7月19日号(7月7日発売)より

文=樋口浩一 写真=Getty Images
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