週刊ベースボールONLINE

背番号物語

【背番号物語】阪神「#25」新井貴浩で長距離砲の源流が復活? 山本和行、猪俣隆の左腕リレーも

 

監督に始まった歴史


阪神時代の新井。背番号は「25」だった


 現役時代、ほぼ一貫して「25」を背負い続けた別当薫については紹介したが、その別当が最初に「25」を着けたのが阪神。阪神の「25」で1936年に初代となったのは森茂雄監督で、1年で外野手の玉井栄に継承され、別当は5代目となる。柔らかいスイングから美しい弧を描く本塁打を放つ別当の打棒はチームメートで「10」を阪神の永久欠番にした藤村富美男らを刺激、両雄は競うように本塁打を量産するようになり、戦後のプロ野球が人気スポーツとして成長していく原動力となっていった。21世紀に入って長距離砲タイプの打者が「25」を着けることが多くなったが、その源流は阪神にあるといっていいかもしれない。

 現在はドラフト3位で2015年に入団して7年目を迎える江越大賀の背中にある「25」だが、21世紀の阪神では、その前任、08年に広島からFAで移籍してきて広島へ復帰する15年オフまで背負った新井貴浩の印象が強い。移籍で別当の後継者となった新井だが、別当と同じく複数チームで「25」を背負った長距離砲で、広島で05年に本塁打王となり、阪神では本塁打こそ減らしたものの、10年に自己最多の112打点、翌11年には93打点で打点王に輝くなど勝負強さで活躍。広島へ復帰した15年だけは「28」だったが、翌16年には「25」に戻して、18年までプレーを続けた。

中軸を期待された濱中も一時期、「25」を着けた


 一方、阪神の「25」を20世紀から21世紀にかけて背負った濱中治(おさむ)も中軸を期待された強打者。プロ3年目の1999年に「66」から変更して5年間を「25」で過ごし、「31」、「5」と変更を繰り返して、キャリアハイを迎えた。濱中と新井の間は前川勝彦渡辺亮と投手が2年ずつでリレーした。別当が2リーグ制となった50年に毎日(現在のロッテ)へ移籍してからは、51年から57年は外野手の日下章、58年から64年は捕手の山本哲也が背負ったが、65年に国鉄(現在のヤクルト)から来て1年で引退した内野手の土屋正孝を最後に、投手が長く着ける系譜となる。左腕の江夏豊が着けた「28」が、江夏の移籍とともに右腕の系譜となったのと似ている。一方で、左腕のリレーとなったのが「25」だった。

 66年に土屋から「25」を継承したのは右腕の古沢憲司だが、古沢が「25」で挙げたのは2勝のみ。64年に16歳で入団したときは「70」で、着実に背番号を若くして「25」となった古沢だが、なかなか芽が出ず、71年に「25」から「51」へと変更すると、12勝を挙げてブレークしている。土屋と同様、その71年に国鉄の後身であるヤクルトから来た高山忠克を挟んで72年に「25」を継承したのが左腕の山本和行。この左腕が、系譜で最長となる17年間「25」を背負うことになる。

優勝を支え、暗黒期を支え


球団最長の17年間、「25」を背負った左腕・山本


 ドラフト1位で72年に入団、1年目から完封を収めるなど即戦力となった左腕は、76年に6勝18セーブ、80年には自己最多、初の2ケタ15勝。82年には自己最多に並ぶ15勝とともに26セーブをマークして、40セーブポイントで最優秀救援投手に輝いた。84年にも10勝24セーブで2度目の戴冠。日本一イヤーの翌85年には通算100勝100セーブを達成するなど“猛虎フィーバー”に沸くチームの原動力となったが、9月に左アキレス腱を断裂、リーグ優勝の瞬間は松葉杖でベンチ裏まで来ていたものの、さすがに胴上げには参加できず。年齢もあって再起不能という声もあったが、続く86年には11勝15セーブと完全復活。阪神の「25」ひと筋を貫き、88年までプレーを続けている。通算700試合登板は大卒の投手としては21世紀に入って中日岩瀬仁紀が更新するまで最多だった。虎の誇る左の鉄腕だ。

 89年に「25」の後継者となったのも左腕の猪俣隆。ドラフト1位で87年に入団したときは「17」だったが、プロ3年目に「25」を継承、暗黒期といえる阪神で白星は増えなかったものの、先発の軸として安定感を発揮した。故障やフォーム改造によって制球難に陥るなど逆風も多かったが、93年に自己最多の11勝を挙げている。97年オフに中日へ移籍。“ダメ虎”との揶揄もあった時期の阪神を支えた不屈の左腕だ。助っ人のハンセンを挟み、「25」を継承したのが濱中だった。

【阪神】主な背番号25の選手
古沢憲司(1966〜70)
山本和行(1972〜88)
猪俣隆(1989〜97)
濱中治(1999〜2003)
江越大賀(2015〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング