「スター性がある選手」
愛工大名電の主将・田村俊介は東北学院との1回戦(8月11日)敗退後、涙を流すナインに言葉をかけていた。毅然とした姿で、最後までリーダーとしての役目をまっとうした
■8月11日 1回戦
東北学院5−3愛工大名電
愛工大名電(愛知)の主将・田村俊介(3年)が「二刀流」の継続を宣言した。
東北学院(宮城)との1回戦(8月11日)。背番号1は先発を託されるも「他の球場とは違って、圧がすごかったです」と、本来の力を出し切れず、3回途中2失点で降板し、右腕・
寺嶋大希(3年)にリレーした。マウンドを譲っても、田村の役割はある。一塁守備に就き、三番打者としてチームを鼓舞。8回表にはソロ本塁打を放ち、2点差としたものの、反撃はそこまでだった(3対5)。
愛知大会では準々決勝で東邦、準決勝で中京大中京、決勝で享栄を撃破。その勢いを甲子園でも披露したかったが、相手の気迫が上回った。新型コロナ禍で昨夏は地方大会が中止。田村は「(昨年の3年生には)甲子園で勝って、1勝でも多くプレゼントしたかったので、悔しい気持ちです」と無念を語った。
高校野球は一区切り。田村は「悔しい思いをしましたが、これから先の道も、大舞台でやらないといけない。この経験は次のステージで生かされると思う」と、この日の試合後に高校卒業後の「プロ志望」を表明した。
そこで、気になるのは投手と野手、どちらで勝負するのか、という点である。
「自分の中では両方、やっていこうと思います。チャンスに強い選手になりたい」
3年間を指導した愛工大名電・倉野光生監督は田村の「適性」と「将来性」について語る。
「高校野球で活躍するには投手、野手の両刀で引っ張ってほしい気持ちがありました。サード、ファースト、外野といろいろなポジションを経験させました。将来は本人の気持ち、行った先でのチーム事情もあるでしょうが、どちらでも花が咲くだけの資質がある」
今後の期待についてこう、続けた。
「勝負強さがある。スター性がある選手。高校生の中では打撃の安定感、飛ばす力は抜きん出ている。投手としては145キロが出ますが、もっと、もっと磨けば、投手としての才能は伸ばせる。海の向こうでは
大谷翔平(エンゼルス)という素晴らしい二刀流の選手がいますが、そんな選手を目指してやってもらえたらいいと思います」
スケールの大きな選手として、たくさんの夢と希望が詰まった田村。あるNPB球団のスカウト幹部は「野手評価」としていたが、ドラフトではどのような結末が待っているか。「令和の二刀流」の動向から目が離せない。
文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎