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後半戦再開 逆転優勝狙う巨人の「育成出身のキーマン」は?

 

リードオフマンとして打線を牽引



 ペナントレースの後半戦が8月13日から始まる。リーグ3連覇を狙う巨人は首位・阪神と2ゲーム差お2位。ヤクルトも阪神と2.5ゲーム差の3位につけており、優勝争いは3チームの戦いになりそうだ。

 前半戦の巨人は故障者が相次いだのに加え、主力の打撃不振、助っ人の電撃退団と想定外の事態が相次いだ。4月27日のヤクルト戦(神宮)で来日デビューを飾った新外国人のエリック・テームズが外野の守備で負傷交代。右アキレス腱断裂の重傷を負った。攻守の軸である主将の坂本勇人も5月上旬に右手親指骨折で1カ月戦線離脱。丸佳浩は打撃不振で6月上旬にファーム降格し、吉川尚輝も左手中指末節骨骨折および左手中指爪根脱臼で戦線離脱した。さらに、新外国人のジャスティン・スモークが新型コロナ禍により家族の来日が叶わないため、電撃退団。FAでDeNAから加入した梶谷隆幸も5月23日の中日戦(バンテリンドーム)の右翼の守備で途中交代。左太もも違和感で登録抹消された。1カ月後に戦列復帰したが、7月10日の阪神戦(甲子園)で死球により右手の甲を骨折で再び離脱した。

 満身創痍の状態で奮闘したのが、リードオフマンとして打線を牽引している松原聖弥だ。今季は丸が新型コロナウイルスに感染して戦線離脱した4月に「一番・中堅」に定着。丸が復帰以降はベンチを温める機会が増えたが、5月下旬に梶谷が負傷で離脱すると右翼でスタメンの出場機会が巡ってくる。丸が打撃不振でファーム降格すると、再び中堅に。その後もチーム事情に合わせて外野の全ポジションを守り、打率.273、8本塁打、21打点、10盗塁と結果を残している。

「ミート能力はもともと優れていましたが、今年は甘い球をスタンドに運ぶ。当てにこられるよりきっちり振り抜かれたほうが嫌ですよ。今年の巨人は一番に松原、二番にウィーラーか坂本勇人という組み合わせが多い。松原は長打を打てるし、足も速い。二番打者と2人で得点を取って打線が勢いづくケースが多いので、松原を抑えるのが後半戦のカギを握ると思います」(他球団のスコアラー)

育成選手から巨人のレギュラーへ


攻守走でスピード感あふれるプレースタイルだ


 有名な話だが、大阪出身の松原は野球留学した仙台育英高で3年夏にスタメンどころかベンチ入りさえできず、スタンドから応援した。明星大で内野から外野に守備位置を変え、2年春から5季連続ベストナインを獲得した活躍がスカウトの目に留まり、育成5位で巨人に入団。無名の存在だったが、驚異的なスピードで階段を駆け上がっている。2年目の18年にイースタン・リーグトップの打率.316、イースタン新記録の134安打を放つと同年7月に支配下昇格。昨年7月に一軍デビューしてプロ初出場を果たすと、8月後半から「二番・右翼」のスタメンに定着し、86試合出場で打率.263、3本塁打、19打点。攻守走で野球センスの高さを示し、原辰徳監督を「天才的に野球をやる方」とうならせた。

 長打力を磨いた今季は自己最多の8本塁打をマーク。逆方向にも飛距離が出るのが大きな魅力だ。4月15日の中日戦(東京ドーム)では相手右腕・福谷浩司の149キロ直球を左翼ポール際に放り込んだ。育成出身の初回先頭打者本塁打はセ・リーグ初の快挙だった。ダイヤモンドを一周した際に、ベンチ前で迎えられたチームメートに親指と人さし指をクロスする「キュンです」ポーズがすっかり定着した。

 育成出身の生え抜き選手が、12球団で一番選手層が厚い巨人で活躍するのはロマンがある。攻守走3拍子そろった松原がファンを「キュン」とさせるパフォーマンスで後半戦も疾走する。

写真=BBM
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