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2021夏の甲子園

知将対決に注目が集まる県岐阜商対明徳義塾。馬淵監督は「勝利へのポイントは捕手」【2021夏の甲子園】

 

「準備万端、整っています」


8月14日に予定されていた第3日が12、13日に続いて中止。第2試合に組まれていた県岐阜商・鍛治舍巧監督は昨夏の甲子園交流試合、今春のセンバツに続き、母校を率いて3回目の甲子園。明徳義塾対策は万全である


 知将対決に注目が集まっている。ベンチとベンチの腹の探り合いは、試合開始前から早くもヒートアップ。すでに、情報戦は始まっていた。8月3日の雨天順延。両校監督は冷静さを保ちつつも、初戦を待ち切れない様子だった。県岐阜商と明徳義塾(高知)は8月14日、甲子園球場内の室内練習場での約2時間の公式練習後に取材に応じた。

 県岐阜商は秀岳館(熊本)で3季連続甲子園4強の実績がある鍛治舍巧監督(70歳)が率い、明徳義塾は甲子園通算51勝の馬淵史郎監督(65歳)が強豪校を束ねる。ともに、相手チームの分析力に優れた名指揮官である。両校とも、今春のセンバツ甲子園では0対1で1回戦敗退。この夏にかける思いは相当だ。

 鍛治舍監督は3日順延を、プラスにとらえる。

「3日連続で甲子園の室内練習場を貸していただけるということはない。他の選手よりも経験できたのは貴重なことなので、心を込めてお礼のあいさつをして、練習を終えました」

 やるべきことは、やってきた充実感がある。

「不安も安心もない。県大会4試合と春のセンバツ(対仙台育英)のビデオは何度も見て勉強したので、準備万端、整っています」

 県大会4試合とは、高知の地方大会2回戦から決勝まで、すべてである。秀岳館時代からデータ収集には特に力を入れてきた。試合は生ものであり、プレーボールしてみないと何が起こるか分からない。鍛治舍監督は選手の特長を頭に入れた上で、試合状況を読みながら、的確なさい配を展開するのがポリシーだ。

 県岐阜商の強みは経験値。エース左腕・野崎慎裕(3年)、正捕手・高木翔斗(3年)など、多くの選手が昨夏の甲子園交流試合(対明豊)と、今春のセンバツ(対市和歌山)でプレーしている。しかしながら、ともに黒星を喫しており、鍛治舍監督は悔しさを胸に、この夏にバトンをつないでいきたい思いが強い。

「交流戦、センバツに続いて3回戦を戦うんだ、と。勢いに乗って、ノビノビと野球をやろう! と言っています」

「キャッチャーの差が出るかもしれない」


明徳義塾・馬淵史郎監督は県岐阜商との初戦を前にして自信をのぞかせた


 対する明徳義塾・馬淵監督も風格十分だ。

 春夏通算36回目の甲子園で、2日連続の水入りでさえ初めての経験だったが、今回は3日順延。「一番、良い状態で生徒たちにはやらせてあげたいので、こればかりは致し方ない。ふだんと同じ状態を維持しており、ホテルでの生活を見ても変わった様子はない」と影響がないことを強調する。自身についても、ストレスがたまることはなく「いたって健康で、精神的にもプレッシャーになっていることはありません」と、ベテランの貫録を見せる。

 8月3日の抽選会から10日以上が経過し、県岐阜商を「丸裸」にしてきた自負がある。宿舎で過ごす時間が長くなっているが、必要以上に相手校のビデオを見ることはない。本来、予定されていた12日に合わせてきたからだ。

「こっちに来る前からある程度の情報もありましたし、来てからも3〜4日あったので、ほとんどデータを見せてもらった。打者のクセ、長所、短所……。(県大会は)2回戦から決勝まで(6試合)全部見ている。センバツのビデオも見ましたが、夏のほうが良いですよね。情報は信頼できていると思います」

 馬淵監督は勝利へのポイントを「捕手」と語った。明徳義塾にはプロ注目の左腕エース・代木大和(3年)がいる。

「(正捕手の)加藤(愛己、3年)は甲子園に出てくる明徳のキャッチャーとしては及第点。私の持論なんですが、キャッチャーが良いときは甲子園に出られる。ということは、出ているので良いキャッチャーだ、と。短所を突くリードなのか、ウチの投手の長所を引き出したほうが良いのか。選択はキャッチャーにあり、そこらへんの駆け引きになる。県岐阜商の高木君も中軸で捕手。ウチの加藤も四番で捕手。キャッチャーの差が出るかもしれない」

 さすがの鋭い視点である。県岐阜商の主将・高木は昨夏、今春に続き、正捕手で迎える3回目の甲子園。センバツでは「好捕手対決」と言われた市和歌山の主将・松川虎生との対戦で惜敗しただけに、最後の夏へかける意気込みは強いものがある。

捕手は「監督の分身」と言われ、1球が勝負の分かれ目になる。明日(15日)の第2試合。最後の1球まで、百戦錬磨の鍛治舍監督と馬淵監督のベンチワークから目が離せない。

文=岡本朋祐 写真=高原由佳
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