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2021夏の甲子園

スカウトも「投球センスがある」センバツ準V明豊を完封、専大松戸・深沢鳳介は緩急自在のクレバーな右腕【2021夏の甲子園】

 

真骨頂を見せる2つのシーン


専大松戸の右腕・深沢鳳介(3年)はサイド気味の独特の腕の位置からボールを投げ込む。1回戦(8月16日)で今春のセンバツ準優勝校・明豊(大分)を完封した


■8月16日 1回戦
専大松戸6−0明豊

 甲子園の借りは、甲子園でしか返せない。そんなメッセージを込めた136球だった。

 専大松戸(千葉)の右腕・深沢鳳介(3年)は明豊(大分)との1回戦(8月16日)で6安打シャットアウト(6対0)。今春のセンバツ準優勝校を撃破した。同校は2015年夏と今春、甲子園に出場しているが、同校としてうれしい聖地初勝利である。

「自分の中では、ゼロに抑えることができたので良かったです。センバツ準優勝の実績があって、自分よりも格上のバッターが多いイメージ。厳しいコースを突いて、挑戦者のつもりでやっていこう、と。勝負球のインコースの真っすぐが、要所で決まりました」

 マウンドで顔色一つ変えない。「苦しい顔をすると、野手にも影響が出る。平常心でいます」。セットポジションからサイド気味の独特な腕の位置で、淡々とボールを投げ込む。しかも、ストライク先行。最速は140キロ台前半だが、数字以上の伸びがあり、打者は差し込まれる。スローカーブも織り交ぜ、打者の打ち気をそらせば、鋭く変化するスライダーで勝負することも。左打者にはツーシームも効果的だった。緩急自在のクレバーな投手である。

 真骨頂を見せる2つのシーンがあった。

 3回表。先頭打者に安打を許すと、次打者のバントで深沢は二塁封殺を狙うが、これが悪送球。このピンチを、三者連続空振り三振で仕留める。「自分の処理ミスで出した走者なので、自分が抑える気持ちが強かった」。8回表の先頭打者は遊ゴロ。打ち取った打球だったが、悪送球で出塁を許す。ここでも連続三振(空振り、見逃し)を奪うと、二死からは相手の走塁判断ミスで、無失点で切り抜けた。

 深沢には、ミスをカバーするだけの強じんな精神力と投球術が備わっている。

「春は自分の失投で負けた」


 悔しさが糧になった。今春のセンバツ1回戦では中京大中京・畔柳亨丞(3年)との投手戦となったが、0対2で惜敗している。深沢は相手打線を3安打に抑えながら、涙をのんだ。

「春は自分の失投で負けた。良い投手と対戦できて、野手陣とも夏にもう一度、甲子園に戻ってくる、と強い気持ちになった。春の負けがあったかたこそ、この勝利ができた」

 明豊はセンバツ準決勝で中京大中京に勝利している。その明豊に勝ったわけであるから、専大松戸にとっては意味のある1勝となった。

 打線は登板した明豊の4投手全員から得点した。一番・吉岡道泰(3年)を火付け役とする打線は、コンパクトなスイングで小技もあり、バリエーションが多い攻撃を展開できる。投手陣は深沢のほか、関東大会を初めて制した春に急成長した右腕・岡本陸(3年)が控え、甲子園で勝ち上がるだけの戦力が整う。

 深沢の投球について巨人・榑松伸介スカウト部次長は「投球センスがある。腕の位置も特長で、両サイド、高低と、ストライクゾーンを広く使える。高めも意図的に使っています」と評価。安定感抜群の「ゲームメーク能力」に加え「勝てる投手」であり、2回戦以降も専大松戸のエースから目が離せない。

文=岡本朋祐 写真=宮原和也
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