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背番号物語

【背番号物語】ホークス「#16」南海では江本孟紀ら、ダイエーでは篠原貴行。ホークスのエポックで輝いた系譜

 

歴代2人だけの助っ人の前に


リリーフとしてダイエー初のリーグ優勝に貢献した篠原


 2017年に初の2ケタ16勝を挙げて最多勝に輝き、リーグ優勝、日本一に貢献したソフトバンク東浜巨。ドラフト1位で入団した13年から背負い続けるているのが「16」だ。ソフトバンクは戦前にプロ野球へ参加した南海が起源で、時代が昭和から平成に変わるタイミングで大阪から現在の福岡へ本拠地を移転、チームもダイエーとなったが、「16」は南海、ダイエーでも優勝、日本一と縁が深いナンバー。栄光の多いチームではあるものの、そんな中でもエポックといえる歓喜の瞬間で、必ず輝いていた背番号だ。

 ダイエー時代で最大のエポックといえるのは、やはりダイエーとして、そして福岡で初のリーグ優勝、日本一となった1999年だろう。南海から続く長い低迷を経て、ホークスとしては26年ぶりのリーグ優勝、35年ぶりの日本一。このときの「16」が左腕の篠原貴行だ。逆指名のドラフト2位で98年に地元のダイエーへ入団、リリーバーとして即戦力となった篠原は、迎えた99年、すぐ前の「15」を背負う右腕の藤井将雄、同じ左腕で「49」の吉田修司、続く「50」で右腕のペドラザらと最強のリリーフ陣を形成。篠原が投げればダイエーが負けない“不敗神話”はシーズンが進むにつれて現実味を帯びていき、優勝が決まった試合で勝利投手となって、すべてリリーフで無傷の14連勝と悲願の原動力となった。

 最終的には14勝1敗で最多勝こそならなかったものの勝率.933で最高勝率に。ちなみに、この1敗はソフトバンクの「29」でも触れたばかりのもので、同じ福岡県の出身、ダイエー初期の功労者でもある近鉄の山本和範に最後の劇的サヨナラ弾を許したものだった。篠原は2003年にもクローザーとしてリーグ優勝、日本一に貢献して胴上げ投手に。翌04年からは故障に苦しんだが、06年からは円熟味を増したセットアッパーとして復活を遂げている。

 篠原と同じリリーバーで、西武で本格的にブレークする前の橋本武広が90年から93年まで着けたこともある「16」。10年に篠原が横浜(現在のDeNA)へ移籍すると、ヤクルト巨人で長距離砲として活躍した助っ人のペタジーニが後継者となるも、1年で退団。その後は欠番と篠原と同じ左腕の小椋真介の2年を挟んで「16」を継承したのが現役の東浜だが、歴代でも「16」の助っ人は2人だけで、南海でも1977年の1年だけ、広島に初のリーグ優勝を呼び込んだホプキンスが着けたことがあった。その前任者も、やはりホークスのエポックといえるリーグ優勝で輝いた不屈の投手だ。

アキレス腱を3度も断裂しながら


南海で胴上げ投手にもなった江本


 南海にとって最後の栄光は、パ・リーグが前後期制を導入したばかりの73年。司令塔で四番打者の野村克也が兼任監督として采配を振るい、ひとまず前期を制した南海は、後期は黄金時代にあった阪急(現在のオリックス)に完敗するも、プレーオフでは阪急を破って王座に着いた。このときシーズン通算12勝、プレーオフでは2勝2敗で迎えた最終戦で、1点差に迫られた土壇場の9回裏に救援のマウンドに立ち、後続を断って胴上げ投手となったのが「16」の江本孟紀だ。江本はプロ2年目の72年に東映(現在の日本ハム)から移籍してきた右腕で、阪神でもエースとして活躍している。

 ただ、その後の長い低迷が印象に残るものの、この73年だけが南海の優勝ではない。戦後の46年にグレートリングとして初優勝、2リーグ制となって2年目の51年から黄金時代に突入。初のリーグ連覇を果たした52年から「16」を背負ったのが森下正夫(整鎮)だ。当時は巨人で「16」を永久欠番とした“打撃の神様”川上哲治も現役で、一般的にも「16」は投手ナンバーとして完全に定着しておらず、森下も内野手だった。

 南海のファーム的な存在だった南海土建から入団すると、1年目から一貫して「16」を背負い続けて、55年には59盗塁で盗塁王に。58年には2度のアキレス腱断裂も、翌59年に復活して2リーグ制で初の日本一に貢献。翌60年に3度目の断裂も、みたび復活を遂げて、66年までプレーしている。森下は指導者としても68年まで「16」を背負い、この17年間が歴代では最長だ。

【ホークス】主な背番号16の選手
森下正夫(1952〜68)
江本孟紀(1972〜76)
橋本武広(1990〜93)
篠原貴行(1998〜2009)
東浜巨(2013〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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