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2021夏の甲子園

降雨コールド負けも大阪桐蔭と互角に戦い「手ごたえを感じた」東海大菅生。この悔しさが強くなる原動力に【2021夏の甲子園】

 

7回の攻守が「勝負の分かれ目」


東海大菅生―大阪桐蔭の1回戦(8月17日)は8回表一死一、二塁で降雨コールドゲームとなった(大阪桐蔭が7対4で勝利)。大阪桐蔭の主将・池田陵真(左)と東海大菅生の主将・榮塁唯(右)は球審から説明を受けた


■8月17日 1回戦
大阪桐蔭7−4東海大菅生
 ※8回表、降雨コールド

 10時38分。激しく雨が降り注ぐ中、山口智久球審が本塁付近で、ゲームセットをコールした。東海大菅生(西東京)−大阪桐蔭の1回戦(8月17日)。8回表一死一、二塁で降雨コールドゲームとなり、大阪桐蔭が7対4で勝利した。降雨コールドゲームは1998年の「専大北上(岩手)6対6如水館(広島)」による引き分け再試合以来である。

 やり切れない思いは当然あるが、東海大菅生・若林弘泰監督は試合後、冷静に振り返った。

「これだけ大会が順延(4日間)された中で、『1試合でも!』というところだったと思いますので、仕方ないです。ルールなので、いろいろな勝負のアヤがある。野球とはそういうもの。後攻を取っていたら、どうなっていたか。もう少し、早く点を取っていれば……。致し方ないのかな、と」

 7時59分のプレーボール時から、厳しいグラウンド条件下で行われ、7回に入り、完全に水が浮き始めた。若林監督はこのイニングの攻守が「勝負の分かれ目」と語った。

 7回表。東海大菅生は4点(1対5)を追う攻撃である。大阪桐蔭はこのイニングを3点以内に抑えればひとまず、リードした形で「試合成立」へと持ち込める。だが、先発の左腕・松浦慶斗(3年)は制球が定まらない。東海大菅生は3点を返して1点差。なおも、二死二、三塁で四番・小池祐吏(2年)を迎えたが、空振り三振に倒れた。その裏、4回から救援していた東海大菅生の左腕・本田峻也(3年)は二死を奪うが、安打と四球で一、二塁。ここで代打・田近介人(3年)に右越え二塁打を浴びる。2人の走者が生還して大阪桐蔭は再び、7対4とリードを広げた。

「あそこで同点、もしくは小池に期待しましたが、あそこでこん身のボールを投げられる松浦君がすごい。(その裏)二死から代打にライトオーバーを打たれた。あそこで、頑張れるか、頑張れないか……」(若林監督)

 3点を追う東海大菅生は8回表一死一、二塁と攻め立てたが10時6分、試合続行が不可能と考えた審判団は、選手を引き揚げさせた。

「中断になったところでまずいな、と。選手の中にも『もしかして……』と多少は覚悟をしていたかなとは思います。泣き崩れている選手もいました」(若林監督)

 7失点のうち4点が、序盤3イニングまでの3本塁打による得点だった。若林監督はこうした空中戦には「対抗するつもりはありません。長打力では勝負にならないので、考えていない。選手を鍛えて、コツコツと点を取っていく」と、今後も東海大菅生のスタイルを追求していく構えを示した。

駒大苫小牧のように……


 3年生にとっては負ければ最後の試合。やはり、やり切れない思いがあり、本音が出た。

「センバツで悔しい思い(準々決勝敗退)をしたから、それを取り返そうというところで、初戦、大阪桐蔭さんという格好の全国トップの学校と戦えたので、まあ、僕の中では互角に戦えたかな、と。だから、話は違いますが、天候の良いところで勝負させたかったとは思います」

 今回は雨中の一戦で涙をのんだ。大阪桐蔭との対戦は、若林監督が甲子園初さい配だった2015年春以来。1回戦で0対8と敗退した。

「最初のときは、手も足も出なかった……。選手を鍛えて、きっちりした野球、目指す野球をやれば、勝負になるのかな、と。手応えを感じた」

 かつて、甲子園の雨を糧にしたチームがある。2003年夏、駒大苫小牧(南北海道)は倉敷工(岡山)との1回戦で、大量リードをしていながら雨天ノーゲーム。仕切り直しの一戦で惜敗した。この敗戦をバネに、後輩たちは翌04年夏、北海道勢初の全国制覇を遂げ、05年も連覇を達成した。どんなときもひるまない、たくましい選手たちだった。

 東海大菅生は不動の正捕手・福原聖矢、四番・小池、二塁手・小山凌暉、遊撃手・金谷竜汰と2年生野手のレギュラー4人が新チームに残る。昨夏は新型コロナ禍で甲子園をかけた地方大会が中止。今夏は2学年上の先輩の思いを胸に戦った。そして今夏、甲子園で最後まで戦えなかった1学年先輩の悔しさを、背負う形となる。秋以降も苦しい場面もあるだろうが必ず、乗り越える原動力となるはずだ。

文=岡本朋祐 写真=高原由佳
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