週刊ベースボールONLINE

背番号物語

【背番号物語】中日「#13」不吉なナンバーからの華麗なる逆転劇! 岩瀬仁紀は21世紀にプロ野球の頂点へ

 

エポックとなった“ジャンボ”


中日で20年、背番号「13」を背負い、リリーフでプロ野球の頂点に立った岩瀬


 この連載で初めて扱う「13」の第1号は、この背番号において、もっともドラマチックな物語を紡いでいる中日。この2021年はプロ2年目で左腕の橋本侑樹が背負っているが、同じ左腕だからこそ、18年まで現役を続けていた岩瀬仁紀の面影を残すファンも多いだろう。10番台は一般的には投手ナンバーで、この点においては「13」も同様だが、すべての背番号の中でも「13」は異色だ。

「13」はキリスト教では不吉な数字とされ、野球がアメリカ由来のスポーツのためか、プロ野球が始まった1936年から巨人を除く全チームで欠番。もちろん、名古屋として参加していた中日も同様だった。初めて中日の「13」が登場したのは戦後の46年で、初代は右腕の林直明だ。当時のプロ野球は1リーグ制。林は1年で社会人に転じ、2リーグ制を模索して結成された国民リーグの結城ブレーブスへ。金星(のち大映。毎日と合併して現在のロッテに)でプロ野球へ復帰し、洋松(現在のDeNA)で引退した、やはり異色の存在だった。

 林の後は竹本卓小沢重光、小川滋ら内野手が着けるも、欠番の時期も多く、系譜は断続的だ。リレーが始まったのは60年、右腕の加藤力雄から。内野手の佐野卓郎を経て、65年に右腕の小川健太郎が後継者となる。小川も初代の林のように、東映(現在の日本ハム)を2年に満たず退団、30歳で中日でプロ野球へと復帰した異色の存在で、29勝で最多勝となった67年には技巧派としては異例の沢村賞に選ばれ、69年にはV9巨人で本塁打王を独占していた王貞治に対して背中から投球する“背面投げ”で異彩を放った。だが、翌70年にオートレースの八百長に関与した容疑で逮捕され、プロ野球からも追放される。その翌71年に大洋(現在のDeNA)から来た外野手の井上幸信が継承するも、一軍出場のないままオフに引退。栄光から一転、「13」に“不吉”な印象が影を落とした。

“ジャンボ”の異名を取った右腕・堂上も背番号「13」だった


 だが、継続は力なり、ということだろうか。そこから逆転が始まる。迎えた72年、新たに「13」を背負ったのが右腕の堂上照だ。20世紀を知らない若いファンには、中日の“後輩”となった剛裕、直倫の父として知っているかもしれない。このとき照はプロ2年目で、「38」からの変更。Vイヤーの74年に一軍デビュー、翌75年から定着して、身長184センチは近年のプロ野球選手としては一般的だが、当時は大柄で“ジャンボ”の異名を取った。先発、救援を問わず投げまくった78年には自己最多の9勝もリーグ最多の18敗、8年ぶりVイヤーの82年は規定投球回には遠く及ばず1勝のみにとどまるも、防御率1.25の安定感で貢献。光が当たることは多くなかったが、85年まで「13」で投げ続けた。これがエポックとなる。

初登板ノーノー、リーグVの立役者


背番号「13」を着けた近藤はデビュー戦でノーヒットノーランの快挙


 堂上の引退で、86年は阪急(現在のオリックス)から移籍してきた捕手の有賀佳弘が着けて1年で引退したが、翌87年に後継者となった新人で左腕の近藤真一(真市)がプロ野球で初めてとなる初登板ノーヒットノーランの快挙。その翌88年には西武から来た右腕の小野和幸が古巣に続いて「13」を背負って18勝、リーグトップの勝率.818でリーグ優勝に貢献した。92年に小野が「11」に転じ、88年から「1」だった近藤が「13」へ復帰。近藤の引退から左腕のキクが1年、ロッテから復帰した右腕の平沼定晴が2年、阪神から来た左腕の猪俣隆が1年と短期間リレーとなったが、猪俣が1年で引退してからは空前の安定期に入った。

 ドラフト2位で99年に入団、1年目から「13」を背負ったのが岩瀬だ。岩瀬は中日だけでなく、プロ野球を代表するリリーバーの1人。1年目から15年連続で登板50試合を超え、18年に現役を引退するまでの通算1002試合登板、407セーブはプロ野球の頂点に輝く。「13」を背負い続けた20年も、もちろん最長だ。

 不吉なナンバーどころか、不可欠な背番号となった中日の「13」。1年の欠番を挟んで後継者となったのが現役の橋本だ。岩瀬と同様、左のリリーバーとして実績を積んでいる橋本。華麗なる逆転劇を見せた「13」を背負って、低迷が続く中日で逆転のキーマンとなるか。

【中日】主な背番号13の選手
堂上照(1972〜85)
近藤真一(1987、92〜94)
小野和幸(1988〜91)
岩瀬仁紀(1999〜2018)
橋本侑樹(2020〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング