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背番号物語

【背番号物語】阪神「#13」不吉なナンバーどころか……沈んでいく虎を支えた救世主たち。最長は13年間の葛西稔

 

初代は2リーグ制で最初の正捕手


背番号「13」を着け、先発、リリーフでチームを支えた葛西


 中日の「13」でも触れたように、不吉な数字だからか、プロ野球の草創期から巨人を除いて「13」は欠番だった。もちろん、ライバルの巨人に続いて創設された阪神も同様で、1リーグ時代は一貫して欠番。初めて登場したのは2リーグ制となった1950年のことだった。これは阪神というチームにとっては単なる球界の再編ではなく、大きな意味を持つ。

 戦前、戦中は巨人と互角の勝負を繰り広げ、戦後も47年に“ダイナマイト打線”を擁して頂点に立った阪神だが、2リーグ分立が運命の分岐点となり、その後は栄光から遠ざかるようになる。原因は球団の急増による苛烈な選手の引き抜きだった。格好の餌食となった阪神は自慢の“ダイナマイト打線”も事実上、瓦解。球団が資金を出し渋ったこともあり、戦力の激減は避けられなかった。こうしたタイミングで登場したのが「13」だったのだ。

 現時点で着けた期間の最長は背番号の数と同じ13年間。90年から2002年まで、世紀にまたがり背負い続けた葛西稔だ。葛西はドラフト1位で90年に入団した右のサブマリン。阪神が2リーグ制で初めて日本一に輝き、“猛虎フィーバー”に沸いた85年から5年後の入団で、“ダメ虎”と揶揄されるようになっていた阪神を先発、救援と役割を変えながらも支え続けた。2年目の91年に先発の一角を占めると、翌92年には開幕投手に。阪神が最下位から一気に2位へと躍進したシーズンだ。

 その後は救援がメーンとなり、96年にはリーグ最多の63試合に登板、翌97年は10セーブ。自己最多の17セーブをマークした2000年には遠山奬志との“リレー”でもファンを沸かせた。これは野村克也監督の奇策で、打者の左右などに合わせて、葛西と左腕の遠山が継投、このときマウンドを譲ったほうが一時的に一塁を守って再登板に備えたもの。低迷期を彩った1コマであり、“遠山&葛西スペシャル”という異名(?)も。これで葛西が一塁を守ったのは5試合だった。葛西は02年まで阪神ひと筋でプレー。奇しくも遠山と同じタイミングでの引退だった。

阪神の初代背番号「13」の徳網茂


 葛西に次ぐ期間2位が、徳網茂の10年間。この徳網こそ、初代の「13」だ。1リーグ時代に阪神の主力だった選手たちが移籍した毎日(現在のロッテ)を初代パ・リーグ王者、そして日本一へと導いていく一方で、どうにか戦力を整えて、セ・リーグのペナントレースに臨んだ阪神。徳網は、強肩強打を誇った土井垣武が抜けた穴を埋めて正捕手を担う。

21年に継承したのはリリーフ左腕


 社会人の大洋漁業から、大洋(現在のDeNA)ではなく阪神でプロのキャリアをスタートさせた徳網。1年目から自己最多の122安打を放ってバットでも貢献して、打席でのせわしないパフォーマンスでも人気に。リードでは球審のクセを見抜いてギリギリのところへ投げさせ、判定で球審と言い争うことも少なくなかったが、試合が終わると必ず謝罪したという。一方、ベンチでは打たれた投手をかばって、投手陣からも信頼された。

 一般的には投手ナンバーの「13」だが、徳網の引退からも捕手が多い。太平洋(現在の西武)か76年に移籍してきて阪急(現在のオリックス)へ移籍する80年オフまで背負った片岡新之介は控え捕手ながら77年には10本塁打、うち満塁弾2発。片岡とのトレードで来た笠間雄二はプロ7年目の83年に初めて規定打席に到達して、球宴にも出場している。

今季からは岩崎が背番号「13」を着ける


 笠間が84年オフに現役を引退したことで、歓喜の85年は欠番。翌86年に新人で外野手の中野佐資が着けたが、2年で阪神では初代の「0」となり、その後は一貫して投手ナンバーだ。ドラフト1位で2011年に入団した左腕の榎田大樹が1年目から「13」のセットアッパーとして活躍。榎田が18年の開幕を前に西武へ移籍すると、榎田とのトレードで来た岡本洋介が着けるも、19年オフに現役を引退して、20年は欠番となる。これを21年に継承したのが、「67」のセットアッパーとして活躍していた左腕の岩崎優だ。

 どういうわけか低迷期には輝くもののVイヤーは目立たない傾向のある「13」だが、この21年は阪神も岩崎も好調。初めて歓喜に沸く「13」となるか。

【阪神】主な背番号13の選手
徳網茂(1950〜59)
笠間雄二(1981〜84)
葛西稔(1990〜2002)
榎田大樹(2011〜2018)
岩崎優(2021〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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