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2021夏の甲子園

球数を増やす「心理戦」。明徳打線が大会No.1風間球打を切り崩した2つのポイント【2021夏の甲子園】

 

確かだった馬淵監督の目


明徳義塾(高知)は明桜(秋田)との2回戦(8月22日)を8対2で勝利。明徳義塾・馬淵史郎監督(右)は157キロ右腕・風間球打(左、アイシング)を攻略し、甲子園通算53勝とした


■8月22日 2回戦
明徳義塾8−2明桜

 心理戦と消耗戦。

 これで、甲子園通算53勝目(歴代4位)。明徳義塾・馬淵史郎監督の目は確かだった。

 明桜との2回戦で157キロ右腕・風間球打(3年)を攻略し、8対2で勝利した。

「大会No.1」と言われた好投手を、どう切り崩していくのか。名将はしたたかだった。そして、選手たちも、指揮官の指示どおりに動いた。ポイントは2つあった。試合後、馬淵監督は明かした。

「ボール球を振らない。1球でも多く投げさせる。2ストライクからも食らいついてくれて、大きかったと思います」

 ボールの見極め。帯広農(北北海道)との1回戦は完投したが、140球とやや多かった。とにかく、球数をほうらせる「心理戦」出たのである。

 秘策は見事にはまった。3回を終え3四球を選び、打者13人のうち、7人がフルカウントまで粘った。バットを短く持ち、追い込まれてからは、際どいコースはファウルで逃げる。3回を終え75球を投げさせ、5回終了時には118球。風間は要所で150キロ超のストレートでねじ伏せてきだが、明徳義塾の徹底力に対して、徐々にスタミナが消耗していく。

 そして、作戦はもう一つ。馬淵監督は言った。

「1回戦はノーゲームと2試合を通じて、けん制を、1球もほおっていないんです。苦手なのかな? と。アウトになってもいいから、走ろう、と」

 機動力を使い、相手投手がクイックとなれば、コントロールがしにくくなる、と判断したのだ。風間がマウンドにいる間、盗塁は成功しなかった(失敗1度)が、走る姿勢を見せるだけで、十分な効果を発揮していた。

県大会では154キロ右腕を打ち崩す


 明徳義塾は2回裏に先制を許すも、3回表に追いつくと、5回表は二死三塁から三番・森松幸亮(3年)の右前適時打で勝ち越した。風間のこの日の最速は、1回戦を2キロ上回る152キロ。明徳打線は序盤こそストレートに空振りをしていたが、中盤以降はしっかり、速球にもついていっていた。風間は6回で降板。139球を投げさせている。

 明徳義塾は高知大会決勝で高知の154キロ右腕・森木大智(3年)を打ち崩し、甲子園へ駒を進めてきた。ボールに角度がある風間に対しても、細部まで研究を重ね、プロ注目右腕から白星を挙げた。

 馬淵監督は試合後のインタビューで不敵な笑みを浮かべた。「1秒でも長く、甲子園にいたい」。3回戦進出。手応えをつかむ1勝となったのは、間違いない。

文=岡本朋祐 写真=高原由佳
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