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2021夏の甲子園

「日本一に値するキャプテン」と西谷監督も称賛。大阪桐蔭・池田陵真のリーダーシップ【2021夏の甲子園】

 

自身に結果が出なくても


大阪桐蔭の主将・池田陵真(右から3人目)はチームをけん引するも、近江との2回戦で敗退。目標の「日本一」には届かなかったが、西谷監督(右端)は労いの言葉をかけた


■8月23日 2回戦
近江6−4大阪桐蔭

 敗軍の将は、兵を語らず。

「キャプテンを中心に『日本一になる』と言い続けてきたが、それができず、申し訳ない」

 大阪桐蔭・西谷浩一監督の試合後のコメントは一貫としている。勝てば選手を称え、負ければ、指揮官が全責任を負う。どんなときも変わらないスタンスである。

 近江との2回戦(8月23日)。大阪桐蔭は4対0から逆転負け(4対6)を喫した。西谷監督がオンライン会見で4度、繰り返した言葉がある。

「一生懸命、子どもたちはやってくれました。それを勝ちに導くのが監督だと思いますので、それができず、残念です。無念です」

 センバツは智弁学園(奈良)との初戦で敗退。悔しい敗戦からチームを立て直し、夏の甲子園へと戻ってきた。3年ぶりの全国制覇には届かなかったが、西谷監督は「大阪桐蔭の1つの大きなページを作ってくれたと思います」と、チームをけん引してきた3年生を労った。

 現在の3年生は、2018年に史上初となる2度目の春夏連覇を遂げた先輩たちの姿にあこがれて入学してきた世代だ。19年4月の入学直後の段階で、2年後の主将は池田陵真で決まっていたという。中学3年時には、侍ジャパンU-15代表でも主将を担った人材である。

 負けず嫌い。練習量。リーダーシップ。

 同級生から一目置かれる存在で、西谷監督も全幅の信頼を寄せていた。

 三番・中堅の池田は東海大菅生との1回戦では4打数3安打1打点と活躍したが、近江との2回戦は3打数無安打(1四球)と当たりが出なかった。しかし、自身の結果を受けて、下を向くような主将ではない。率先して声を出し続け、鼓舞し続けた。西谷監督は言う。

「池田で打って勝ってきた試合は、たくさんあった。打てないときもある。キャプテンとしてやってくれた。一番、頼もしい選手です」

「負けは負けと認めて、次に進む」


 だからこそ、西谷監督は10分間のオンライン会見で、最も力を込めたコメントがある。

「日本一のキャプテンにさせてやりたかったが……。それに値するキャプテンだった」

 主将・池田は言った。

「この3年生20人、このメンバーともっと野球を長くやりたかった。試合をしたかった。もっと、やれた。自分たちの力を出せた。でも、負けは負けと認めて、次に進む。甲子園でやらせていただいたことを感謝して、これからも頑張っていきたいです」

 人のために、汗を流せるのが池田の真骨頂だ。

 大阪桐蔭は春3度、夏5度の甲子園優勝と高校野球界をけん引する存在だ。野球部創部は1983年。兵庫・報徳学園出身の西谷監督は常々「ウチにはまだ、伝統がない。太く、強く、一つずつ年輪を刻んでいかないといけない」と語っていた。目標の「日本一」には届かなかったが、その過程は間違っていなかったと、胸を張って言える。池田は「結果」だけではない「財産」を後輩たちへ残した。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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