名将・野村克也氏は「優勝チームに名捕手あり」と喝破した。シーズンも終盤戦を迎えるが、セ・リーグ各球団の捕手の現状はどうなっているのだろうか。優勝争い、CS争いも佳境となってくるが、“扇の要”がしっかりしているチームが勝ち抜くことになるのは間違いない。 記録は8月23日現在 読売ジャイアンツ
ペナントレースも残り50試合となった時点で昨季セ・リーグベストナイン捕手の
大城卓三が66試合の先発マスクで正捕手と言える。前半戦はこれに
炭谷銀仁朗が18試合の先発で続く形だったが、ベテラン捕手はオールスターブレイクを前に
楽天に移籍。ここで5月は一軍出場ゼロに終わるなど、前半戦の多くを二軍で過ごしていた小林誠司が第2捕手へ。ここまで先発は9試合、21試合は試合終盤の守備固めとして出場数を増やしている。2019年の
原辰徳監督復帰初年度は3捕手併用制で、その中でも92試合出場の小林が正捕手に近い役割を担ったが、その形は大きく様変わりした。第3捕手としてはここまで先発ゼロ、13試合出場の
岸田行倫。二軍では高卒2年目の
山瀬慎之助が
阿部慎之助二軍監督の下、英才教育を受けている。
阪神タイガース
阪神の正捕手は? と聞かれたほぼ全員が「梅野隆太郎」と答えるはずだ。3年連続ゴールデン・グラブ賞を獲得。追加招集ながら東京五輪の日本代表にも選出された。ブロッキングと強肩は球界No.1と言ってもいいほどだ。打撃も意外性に富み、今季打率.248ながら得点圏打率はリーグ2位の.393という勝負強さを持つ。その男が下位打線、現在は八番を打つのだから、阪神が首位なのもある意味必然なのかもしれない。第2捕手には、他チームでは正捕手になれるだけの能力を持つ
坂本誠志郎に、打力が魅力の
原口文仁と、阪神捕手の層は厚い。
東京ヤクルトスワローズ
奥川恭伸ら若手投手が先発する際には、ファームでバッテリーを組んだ経験の多い
古賀優大がマスクをかぶることもあるが、中村悠平が正捕手として攻守でチームを支えている。中村は今季、76試合に出場して打率.294。捕手としてだけでなく、六番打者として打線の中でも重要な役割を担う。四番・
村上宗隆から五番・
オスナ。七番・
サンタナといった長打力を備える強打者たちへのつなぎ役となり、勝負強さを発揮している。守備では、後半戦開幕となった8月15日の
DeNA戦(新潟)で、これまであまり組んでこなかった奥川を7回1失点と好リード。さすがの経験値を見せつけた。古賀だけでなく、ファームでは
内山壮真が腕を磨いているが、扇の要・中村の信頼感は揺るがない。
中日ドラゴンズ
落合政権下で長く正捕手を務めてきた
谷繁元信(元監督)が退いて以降、そのポジションはチームにとって大きな課題だった。それでも昨年後半から木下拓哉が攻守で活躍、正捕手争いを一歩抜け出し、今シーズンも木下で定着している。巧みなリードに加え、盗塁阻止率も高く、打撃力もある。今や攻守でチームになくてはならない選手となった。6月に強肩の
加藤匠馬を
ロッテにトレードに出したのも、木下拓の成長があったからこそだろう。ただし後半戦スタートとなった巨人3連戦の先発マスクは木下拓、A.
マルティネス、
大野奨太と3戦とも違った。低迷するチーム状況のなか、首脳陣もあらゆる手を打っているが、柱となるのは木下拓で間違いない。投手陣が武器のチームにとって木下拓の存在は限りなく大きい。
広島東洋カープ
本来の正捕手の
會澤翼を左足ふくらはぎの故障で欠いている現在は、
大瀬良大地、
九里亜蓮、
玉村昇悟の先発時は坂倉将吾、
森下暢仁、
大道温貴の先発時は
石原貴規が先発マスクをかぶる形で機会を分け合い、
中村奨成が控える。坂倉は、五番打者として打線に欠かせない存在となっており、先発マスクでないときは一塁手でスタメンに入る。同じゲームで捕手から一塁手、またはその逆にポジションが変わることもしばしばだ。試合終盤の守備では、
栗林良吏とのコンビネーションやセカンドスローの正確さで信頼を得ている石原が「抑え捕手」に入ることも。現在は3人制だが、中村奨も外野起用があり得るため、
磯村嘉孝を含めた4人体制になるときもある。
横浜DeNAベイスターズ
シーズン序盤は開幕スタメン起用の
嶺井博希、6年目の
戸柱恭孝が併用されたが、先発投手が軒並み不調でチームは勝ち星を積み重ねることができなかった。加えて両捕手は打率1割台と打撃面で振るわなかった。5月末にケガから復帰した
伊藤光が昇格しマスクをかぶると、チームは波に乗り交流戦を3位で終えた。伊藤光が若い投手陣を巧みにリード、打線では二番に入り「つなぎ役」に徹したことが大きかった。成長著しい捕手が4年目の山本祐大だ。球界でもトップクラスの強肩、強気なリードで評価はうなぎのぼり。後半戦はスタメンでの起用も増えている。
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