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ベースボールゼミナール

長い距離のスローイングをうまくするには?/元西武・平野謙に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は外野守備編。回答者はゴールデン・グラブ賞に9度輝いた名手、元西武ほかの平野謙氏だ。

Q.中学生です。長い距離のスローイングがなかなかうまくいきません。どのようにしたら長い距離を正確に投げられるのでしょうか。(山形県・14歳)


西武時代の平野謙氏


A.外野手の送球は走者を刺す、先に行かせないのが目的で遠くに投げたり、いい球を投げることではありません

 ロングスローで大切なのは「遠くに投げなきゃ」という考え方をしないことです。外野からの返球は、100メートル以上を投げることはまずありません。カットマンまでや、各ベースまでと考えれば、高校生レベル以上であっても、マックス50メートルくらいという考え方でいいと思います。

 長い距離を意識すると、どうしてもノーバウンドで投げたいという心理状態になり、高い放物線で投げてしまいます。厳しいことを言えば、それは実戦の中では役に立ちません。目線くらいの高さの強い球であれば、バウンドしても高い山なりの送球より早く相手に届きます。人工芝ならなおさらでしょう。したがって、中学生であれば、練習でも30メートルくらいの距離を目線の高さの球でしっかり相手の胸に届かせる送球を意識してください。

 肩の強さ以上に大事なのは順番です。まず、何より重要なのは捕ることですよね。そして捕ったら投げるほうの手でボールを握り、縫い目に指をかける。そのあとランナーがどこにいるか、どこのカットマンが手を上げているかを確認し、カットマンに向かって投げるのが外野手の基本です。早く投げよう、強い球を投げようとし順番を間違えるとミスが多くなります。練習の際も順番を守り、1つも抜かずにやってください。

 送球がシュート回転やスライダー回転をすることがありますが、別に気にしなくてもいいと思います。要は変化しても、どう投げたら相手のところに行くのかを覚えればいいだけです。「絶対に真っすぐ」と頭に強くあると、ゲームの中で目的が分からなくなります。外野手の送球は走者を刺す、先に行かせないのが目的で、いい球を投げることではありません。

イラスト=横山英史


 肩が弱いからスローイングがうまくいかないのであれば、肩周りのインナーマッスル、体幹を強くすれば、投げられる距離は確実に伸びます。トレーニングの際の注意点は肩の可動域を狭くするような大きな筋肉をつけないことです。ゴムチューブや、1、2キロの軽いダンベルなどを使うのがお薦めです。ケアとしても役立ち、私も現役時代、練習のあとや練習がない日に肩の細かい筋肉を軽いダンベルで鍛えていました。

 試合中の故障にも気をつけてください。外野手はいつ投げるか分からない。寒いときなど、急に投げて肩を痛めるときもあります。肩を回すとか、投げるまねをするとか、それだけでも違ってきます。

●平野謙(ひらの・けん)
1955年6月20日生まれ。愛知県出身。犬山高から名商大を経て78年ドラフト外で中日入団。88年に西武、94年にロッテに移籍し、96年現役引退。現役生活19年の通算成績は1683試合出場、打率.273、53本塁打、479打点、230盗塁。

『週刊ベースボール』2021年8月2日号(7月21日発売)より

写真=BBM
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