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プロ野球はみだし録

「野村監督が嫌いだ」の怪文書で阪神を自由契約のメイ、巨人では阪神への危険球で「To him」【プロ野球はみだし録】

 

ミレニアム日本一の“起爆剤”?


阪神時代のメイ


 20世紀の最後、2000年。このシーズンの頂点に輝いたのは巨人だった。率いるは長嶋茂雄監督だ。2位の中日に8ゲーム差をつけてセ・リーグを制すると、現役時代は“ON砲”を形成した王貞治監督のダイエー(現在のソフトバンク)を日本シリーズで破って日本一に。最大の勝因は補強を重ねて当時のプロ野球を代表する長距離砲をズラリと並べた“ミレニアム打線”で、プロ8年目にして四番打者に固定された松井秀喜がシーズン、シリーズでダブルMVPに輝いている。一方の投手陣も盤石の補強。前年の日本一チームだったダイエーからFAで左腕の“優勝請負人”工藤公康が加入、チームトップの防御率をマークした助っ人で同じく左腕のメイも阪神からの“補強”だ。ただ、このメイの“移籍”には複雑な経緯がある。

 メイが阪神へ入団したのは1998年だったが、翌99年に野村克也監督が就任すると衝突。球団に退団を申し入れたが、却下されると、「私は野村監督が嫌いだ。彼のためにプレーしたくない」などと書かれた“怪文書”を二軍の鳴尾浜球場で報道陣に配って、無期限謹慎、罰金1200万円の処分を受ける。そしてオフ、自由契約に。そんなメイに“救いの手を差し伸べた”のがライバルの巨人だったのだ。

巨人時代のメイ


 これで水を得た魚のように活躍するようになったメイ。阪神では口の周囲をグルリと囲むように整えていたメイだったが、これを巨人では「紳士たれ」とバッサリ剃り落とした。だが、プレーまでは「紳士たれ」とはならず、6月7日の阪神戦(東京ドーム)で和田豊に対して背中を通すような危険球を投じる。前年までチームメートだった和田が立て続けに打席を外した直後のことだった。試合が終わり、「あれは和田を狙ったのか」と訊かれると、「安心安全な投球だった」などと弁解することなく、「To him(彼を狙った)」とキッパリ。数々のトラブルでも名を残す助っ人だが、ある意味、メイは正直な男だったのかもしれない。これでセ・リーグから10日間の出場停止、罰金50万円の処分が下された。

 メイは翌2001年も10勝。退団、帰国して、メジャーに復帰している。

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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