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日本人メジャーの軌跡

メジャー1年目、松坂大輔は甲子園連覇、日本一、世界一を成し遂げた最初の日本人投手へ/日本人メジャーの軌跡

 

2007年、レッドソックスでいよいよ松坂大輔のメジャー1年目が始まった。フロリダ州フォートマイヤーズでのスプリングトレーニングの初日にはファン300人、日本の報道陣250人が駆け付けた。ファンや記者たちは松坂の一挙手一投足に注目した。チームメートも関心を向けた。エースのカート・シリングは「松坂と直接コミュニケーションをとりたい」と、熱心に日本語の単語帳に目を通していた。

ワールド・シリーズで勝利投手に


メジャー1年目でいきなり世界一に輝いた松坂(右。左は岡島秀樹


 松坂フィーバーの中で調整を続け、3月2日に実戦デビューを迎える。ボストン・カレッジとのオープン戦。1回先頭のジョニー・エアーズにいきなり左翼へ二塁打を喫する。注目の松坂から安打を放ち、エアーズは地元メディアの取材を受け「とてつもない高揚感だった」と答えていた。だが松坂はその後をきっちりと締め、2回1安打無失点で終えた。なおエアーズはフットボール選手でもあり、その後NFLを目指したが叶わなかった。

 公式戦初登板は4月5日、敵地でのロイヤルズ戦だった。シリング、ジョシュ・ベケットに次いで先発三番手だった。木曜日のデーゲーム。気温2度の寒さで開始された。1回、先頭打者に中前打を許して一死一、二塁のピンチを迎えるも、投ゴロ併殺で切り抜ける。結局7回を108球で6安打1失点。ロイヤルズのザック・グリンキー(現アストロズ)に投げ勝った。「ふだんどおりの気持ちで臨めた」と松坂。テリー・フランコーナ監督は「序盤からすべての球種が切れていた。素晴らしかった」と喜んだ。

 初登板を白星でスタート。前半戦は10勝6敗、防御率3.84と、先発陣の一員にふさわしい成績を収めた。後半戦は5勝6敗、防御率5.19と苦戦した。プレーオフでもエンゼルスとの地区シリーズ第2戦、インディアンスとのリーグ優勝決定シリーズ第3戦に先発し、いずれも4回2/3しか投げられなかった。

 決戦となったリーグ優勝決定シリーズ第7戦。ローテーションどおりなら先発は松坂だったが、地元メディアは「大事な試合なのに、松坂で大丈夫か」と不安視した。それでもフランコーナ監督は松坂を先発に起用。期待に応え5回を2失点で勝利投手。チームをワールド・シリーズに導いた。

 西武時代の先輩、松井稼頭央のいるロッキーズとのワールド・シリーズでは第3戦に先発。打席では左前2点適時打を放ち、5回1/3を2失点で、日本人選手として初めてワールド・シリーズで勝利投手になった。

 春、夏の甲子園で全国制覇、西武で日本一を経験し、メジャー1年目でワールド・シリーズ優勝を果たし、いきなり頂点に立ったのだった。

『週刊ベースボール』2021年7月26日号(7月14日発売)より

文=樋口浩一 写真=Getty Images
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