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背番号物語

【背番号物語】巨人「#15」全ポジションをコンプリート? 最長は87年MVPの“意外性の男”山倉和博

 

たった1人の捕手


87年には22本塁打を放ちMVPに輝いた山倉


 巨人が誇るエースナンバー「18」を筆頭に、“元祖”エースの系譜といえる「11」など、巨人の背番号、特に投手ナンバーの10番台には、もちろん少なからず例外はあるとはいえ、一定の物語があるように見える。このうち、脱線でインパクトを残しているのが「12」だが、もっとも例外的といえるのが「15」だろう。この2021年は来日2年目で右腕のサンチェスが「20」から変更して後継者となった。系譜の助っ人では第1号だが、これも“脱線”ではない。バラエティー豊富、属性も多彩。これこそが「15」の“傾向”だ。

 一般的には投手ナンバーということもあり、やはり系譜としては投手が多いものの、捕手から内野手、外野手と、すべてのポジションをコンプリート。もっとも登場が遅いのは捕手だが、たった1人しかいない。1980年代を中心に司令塔を担った山倉和博。投手では江川卓、打者では現在の監督でもある原辰徳中畑清ら、スター選手たちの百花繚乱といった時代の貴重な名バイプレーヤーだ。

 ドラフト1位で78年に入団した山倉は、1年目から「15」を背負い、当初は動きが鈍いと“ナマクラ”などと揶揄されたが、開幕戦から先発マスクをかぶると、初安打を本塁打で飾る鮮烈デビュー。捕手ならではの思考により試合の流れを読み、点差が離れているときには簡単に凡退することも少なくなかったが、ここぞという場面での勝負強さや長打力から、いつしか異名は“意外性の男”に。リードでも投手陣の信頼を集めて、80年には正捕手の座に就くと、10年目の87年には自己最多の22本塁打を放って攻守でリーグ優勝に貢献して、巨人の捕手として初めてMVPに輝いている。山倉は90年オフに引退するまで巨人ひと筋、一貫して「15」を背負い続けて、その13年間は最長だ。

ドラフト1位で入団し、背番号「15」を着けた河原


 無愛想と受け取られようと裏方に徹し続けた山倉だったが、その山倉に次ぐ“足かけ”11年で「15」を背負ったのは、ポーカーフェースが印象に残る右腕の河原純一。山倉の後は1年の欠番で、右腕の小原沢重頼を挟み、ドラフト1位で95年に入団した河原が1年目から後継者となって先発で7勝を挙げる。2002年には救援で28セーブをマークしたが、05年のセ・リーグ開幕を前に、すでに開幕していたパ・リーグの西武へ移籍、このときのトレードで来た後藤光貴が閉幕まで「15」を継承したが、そのオフに西武へ復帰。そこから左腕の辻内崇伸が3年、1年の欠番を挟んで右腕の木村正太が1年と短期間リレーに。そして、11年に後継者となったのがドラフト1位で入団した右腕の澤村拓一(現レッドソックス)だ。

ロッテへ移籍、ロッテで復帰


20年途中にロッテに移籍するまで「15」を背負った澤村


 巨人の「14」はチームの創設メンバーで戦前、戦中の伝説的なエースだった沢村栄治の永久欠番。同じ“サワムラ”として続く「15」を背負った沢村は1年目から11勝を挙げて新人王、15年からはリリーフに回って、翌16年には37セーブでセーブ王に。ただ、「15」10年目となった20年シーズン途中にロッテへ移籍して、着けた期間では歴代4位に終わっている。

 11年目を迎えて移籍した河原と、あとわずかで10年というところで移籍した澤村。その間につけているのが、1962年から71年の10年ちょうど、「15」を着けた右腕の城之内邦雄だ。「15」の系譜に安定感が出てきたのは城之内からで、1年目から開幕投手を務めて24勝、新人王に輝いて“エースのジョー”と呼ばれた城之内は、以降7年連続2ケタ勝利、V9がスタートした65年には4連続完封、10連勝を含む21勝。5年目となる翌66年には通算100勝を突破した。ノーヒットノーランもあった68年を最後に腰痛もあって徐々に失速、71年オフにユニフォームを脱いだが、2年のブランクを経てロッテで現役に復帰、1年だけプレーしている。

 城之内までは手塚明治岩下守道木次文夫が内野手。2代目が外野手で“塀際の魔術師”の異名を取る前の平山菊二で、いずれも複数シーズンで背負い、投手は初代の畑福俊英八島米雄、上野新と1年ずつと、野手が優勢だった。ただ、畑福は巨人の前身、大日本東京野球倶楽部でも「15」を着けており、巨人でも同じ背番号を着けた唯一の選手でもある。

【巨人】主な背番号15の選手
城之内邦雄(1962〜71)
山倉和博(1978〜90)
河原純一(1995〜2005)
澤村拓一(2011〜20)
サンチェス(2021〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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