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プロ野球記録ノート

阪神・青柳晃洋に期待される53年ぶりの快挙「アンダースロー防御率1点台」【プロ野球記録ノート】

 

14試合でクオリティスタート


抜群の安定感を見せる阪神のアンダースロー・青柳


 阪神のサブマリン・青柳晃洋がリーグ一番乗りの10勝をマークし、防御率もリーグ唯一の1点台の1.91でトップ(8月30日現在)だ。

 青柳の今季の登板は、

  月日 相手 勝敗 回 失 自 防御率 順位
 3月27日 ヤ  ○  5.2 3 3 4.76 11位
 4月 3日 中  ―  7.1 0 0 2.08  4位
 4月10日 デ  ○  7  0 0 1.35  5位
 4月21日 巨  ●  6  3 3 2.08  8位
 4月28日 中  ●  6  2 2 2.25  7位
 5月 5日 ヤ  ―  6  1 1 2.13  3位
 5月14日 巨  ○  7  1 1 2.00  5位
 5月28日 西  ―  5.1 4 4 2.50  4位
 6月 4日 ソ  ○  8  1 1 2.31  5位
 6月11日 楽  ○  8  2 1 2.17  3位
 6月22日 中  ○  7  1 0 1.96  1位
 6月29日 ヤ  ○  7  2 2 2.02  1位
 7月 6日 ヤ  ○  8  0 0 1.83  1位
 7月12日 デ  ―  7  3 1 1.79  1位
 8月17日 デ  ○  6  2 2 1.87  1位
 8月24日 デ  ○  7  2 2 1.91  1位

 の16試合。今季初登板となった3月27日のヤクルト戦と交流戦の初登板だった5月28日の西武戦以外の14試合はクオリティスタートをマーク。先発として十二分に責任を果たしている。特に6月以降の安定感は抜群で、6月は4勝、防御率1.20で月間MVPを獲得。7、8月の4試合も3勝、防御率1.61と1点台の防御率をマークしていて、アンダースロー投手の防御率1点台が期待される。

 青柳は2019年から3.14(6位)、3.36(6位)と2年連続規定投球回に達しているが防御率はいずれも3点台。近年あまりアンダースローの投手はいないが、2000年以降で規定投球回に達したのは(青柳を除く)、

 2003年 渡辺俊介(ロ)3.66  7位
 2004年 渡辺俊介(ロ)3.59  5位
 2005年 渡辺俊介(ロ)2.17  2位
 2006年 渡辺俊介(ロ)4.35 15位
 2007年 渡辺俊介(ロ)2.44  4位
 2008年 渡辺俊介(ロ)4.17 18位
 2009年 渡辺俊介(ロ)4.05 14位
 2010年 渡辺俊介(ロ)4.49 16位
 2012年 牧田和久(西)2.43  7位
 2013年 牧田和久(西)2.60  3位
 2014年 牧田和久(西)3.74  9位
 2019年 高橋 礼(ソ)3.34  4位

 の3人しかいない。この中で一番防御率が良いのが2005年のロッテ・渡辺俊介の2.17。1点台を記録した投手はいない。

過去には数多かったアンダースロー


 1970年代から80年代半ばあたりまで、野球少年がアンダースローの真似をするぐらいエース級の投手が数多くいた。

 通算200勝を達成したのが山田久志(阪急)、同じく阪急の足立光宏は1960年代から活躍し通算187勝をマーク。巨人などで活躍した渡辺秀武も60年代から2ケタ勝利を挙げて通算118勝。通算100勝以上は高橋直樹(日本ハムなど)、西武黄金期の先発だった松沼博久仁科時成(ロッテ)、三沢淳(中日など)、山下律夫(大洋など)、サイド気味だったが巨人、阪神で活躍した小林繁広島時代は最多勝、南海時代は最優秀救援を獲得した金城基泰など、アンダースロー全盛期の時代だった。

 ただ1970年代中盤から「打高投低」の時代でもあり、70年以降防御率1点台は1人もいない。2.50を下回ったのはたったの5例で、最高は1977年の山田で2.28(リーグ1位)。続いてやはり山田の1971年の2.37(1位)、1976年の2.39(5位)、小林の1974年の2.42(3位)、足立の1971年の2.49(2位)だ。1980年代にも1度もなく、最高は松沼の1982年の2.83(4位)だった。

68年に防御率1.61をマークした南海・皆川


 さて、それではアンダースローが最後に防御率1点台をマークしたのは誰なのか。いまから53年前の1968年、南海の皆川睦男の1.61(1位)だ。皆川はこの年33歳、プロ15年目の大ベテラン。それまでは1962年の19勝が自己最多だったが、56試合に登板、そのうち38試合が先発で27完投、8完封で31勝10敗のキャリアハイを記録。最多勝と最優秀防御率のタイトルを獲得。アンダースロー最後の防御率1点台とともに、プロ球界で最後の30勝投手でもある。

 皆川の前年、阪急の足立も1.75(1位)で1点台。1960年代では大洋の秋山登が1960年(1.75=1位)、1962年(1.92=4位)に記録。1950年代は巨人の大友工が1953〜55年、中日の石川克彦が1955年、皆川が1958年、南海の杉浦忠が1959年にマークしている。

 1点台の防御率をマークするだけでも大変なことで、それが数少ないアンダースローとなればかなり貴重なことだ。ぜひ青柳には狙ってほしい記録だ。

文=永山智浩 写真=BBM
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