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背番号物語

【背番号物語】近鉄「#51」21世紀にオリックスとなったバファローズの「恐ろしいこと」が近鉄で起きていた?

 

3代目は“18歳の四番打者”


近鉄で指揮官を務めた仰木監督はコーチ時代に「51」を着けていた


 近鉄は2004年いっぱいでオリックスに吸収される形で合併、そして“消滅”。ニックネームのバファローズがオリックスに継承される形で残された。オリックス・バファローズとしての最初の監督に就任したのが、近鉄とブルーウェーブ時代のオリックスで監督だったことのある仰木彬だ。このとき、仰木にとってはブルーウェーブ時代の“弟子”で、マリナーズでプレーしていたイチローが仰木に「51」を着けることを提案したが、仰木が「そんな恐ろしいことができるか」と断った、というエピソードはオリックスの「51」を紹介した際にも触れている。

 オリックスから世界に羽ばたいて、世界のヒットメーカーとしてイチローが「51」を大きな背番号としつつあった時期だ。ただ、それ以前の近鉄で、仰木はコーチとして「51」を背負ったことがある。西鉄(現在の西武)で現役を引退した仰木は、そのままチームに残って指導者の道を歩み始めたが、70年には西鉄での“恩師”三原脩監督が率いていた近鉄へ。このとき着けたのが「51」だった。とはいえ、仰木の「51」は1年だけ。翌71年には「71」となり、そのまま88年には監督に就任、翌89年にリーグ優勝へと導いて、92年オフに退任するまで「71」を通している。

 まだ仰木が「51」を着けた当時は、50番台の背番号には指導者のイメージが色濃く残っていた。だが、近鉄の「51」では仰木が指導者の第1号で、すでに近鉄では好打者の背番号として「51」は実績を残している。仰木の前任は2年だけ在籍した捕手の松下芳夫で、偵察メンバーの外野手として1試合の出場にとどまっているが、その松下の前に7年間「51」を背負ったのが“18歳の四番打者”として売り出された土井正博だ。

“18歳の四番打者”として10代から活躍した土井


 大鉄高1年生のときからプロのスカウトから注目された土井は、2年のセンバツに出場、その秋には近鉄から入団を打診され、女手ひとつで育ててくれた母を楽にさせたいという思いから1人で近鉄と契約。大鉄高を中退して、61年の年明けからチームに合流。このとき背負ったのが「51」だ。一軍出場のないままオフに解雇されたが、新たに就任した別当薫監督によって解雇が撤回されると、翌62年のオープン戦で四番打者に抜擢された。その翌63年には公式戦でも四番に座る。このとき19歳。当時は最年少の四番打者だった。

指導者のリレーを挟んで失速……


 土井は4年目の64年にリーグ最多の168安打。67年にはV9巨人王貞治長嶋茂雄の“ON”を上回る得票で球宴に出場、MVPに選ばれ、ペナントレースでも2度目のリーグ最多147安打を放つ。そのオフには長嶋の代名詞でもある「3」へと変更した。74年まで在籍した近鉄では“無冠の帝王”といわれ、移籍した太平洋(現在の西武)で初めて本塁打王に輝いた土井だが、「51」ではシーズン30本塁打に届いておらず、長打力を兼ね備えながらも三振が少ない安定感の印象も強い。土井や仰木が近鉄の「51」だったときは、のちにオリックスでイチローが「51」で初めてシーズン200安打をクリアすることも、近鉄が21世紀に“消滅”することも、まだ誰も想像だにしなかった時代だ。

 土井は近鉄の「51」では3代目。仰木の後は引退したばかりの阿南準郎がコーチとして後継者に。のちに広島をリーグ優勝に導く阿南が指導者として最初に着けたのが「51」だった。阿南からは選手のリレーに。阪神から移籍してきて2年目となる捕手の真鍋幹三が「57」から72年に変更して自己最多の37試合、2本塁打を放ったが、74年いっぱいで引退。その後は投手、野手を問わず後継者が続いたが、「51」で大ブレークを遂げた土井とは対照的に伸び悩む系譜となる。

 それでも、83年に後継者となった外野手の佐藤純一はVイヤーの89年に「35」となるまで守備固めや代走がメーンながらチームをバックアップ。「51」を継承した右腕の太田暁はパンチ力を買われて内野手に転向もゼロ安打に終わったが、この太田が歴代で最長の8年間だ。2002年に最後の「51」となった左腕の佐藤和宏は03年に1試合の登板のみだったが、分配ドラフトで05年に“移籍”した楽天で、そのまま初代の「51」となっている。

【近鉄】主な背番号51の選手
土井正博(1961〜67)
仰木彬(1970)
阿南準郎(1971)
佐藤純一(1983〜88)
佐藤和宏(2002〜04)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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