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【MLB】看板選手を一掃…超人気球団の決断は正しいのか?

 

2016年、108年ぶりの世界一に輝いたカブス。その中心選手だったブライアント(中央)とリゾ(右)。彼ら主力を放出し、再建に入った。5年以内に強豪チームとなれるか!?


 カブスが7月15日から30日までの半月間に、7球団相手に8つのトレードをまとめ、31歳のアンソニー・リゾ一塁手、28歳のハビア・バエズ遊撃手、29歳のクリス・ブライアント三塁手ら看板選手を含む9人のメジャー・リーガーを放出、12人の、ほとんどがマイナーの若手と交換した。

 彼らはカブスに108年ぶりの世界一をもたらしたシカゴの英雄である。しかしながら全員シーズンが終わればフリーエージェントになる。チームは6月25日から7月6日に11連敗したことで、ポストシーズン進出の見込みがなくなった。オフにこういった選手を無償で失うよりはと、今トレードすることにした。

 ジェド・ホイヤー編成本部長は「とても難しい決断を下さねばならない時がある。心情的にはつらいが、チーム運営の上では正しい。中途半端にやる理由はない」と言った。筆者は藤川球児和田毅ダルビッシュ有の3投手が所属したことで過去10年間はカブスを取材する機会が多かった。セオ・エプスタイン編成部長率いるチームは、優勝するために手段を選ばなかった。ドラフトでトップ指名権を得るために最初の数年は公式戦で勝てる陣容を整えず、あえて負けていた。

 働きの良いベテラン選手はシーズン中に他球団のトッププロスペクトとどんどん交換した。思い出すのは12年12月リグレー・フィールドでの藤川選手の入団会見で地元記者が「このチームは活躍しているベテランをよくトレードに出すが、そのことは知っているのか」と藤川本人に質問したことだった。

 こういった徹底したプロスペクト獲得作戦は功を奏し、エプスタイン就任5年目の16年に世界一になり、彼のチーム作りは、今現在ほかの再建チームのお手本になっている。そして今回、解体作業も徹底していた。エプスタインは昨年の11月に辞任したが、長年の部下で、今季から編成本部長になったジェド・ホイヤーは「タイガース、ジャイアンツ、フィリーズの例を見れば良い。彼らは同じメンバーで長く戦い続けたが、チーム力が下がってしまい、おかげで再建に5年以上かかった。私たちはそんなに長くかからない。今回のトレードでスピードアップ。良い若手選手をたくさん獲得できた」と説明した。

 バエズとの交換で、メッツから20年のドラフト一巡ピート・クロー・アームストロング外野手。リゾとの交換でヤンキースからアレックス・ビズカイーノ投手、ケビン・アルカンタラ外野手などを迎え入れた。昨オフの12月のダルビッシュのトレードのときもパドレスから10代のプロスペクトを複数手に入れている。

 球団運営では、看板選手を大事にするのではなく、どんどん入れ替えるのが正しいということなのか? 実際、歴史的に見ても殿堂入りのグレッグ・マダックス、アンドレ・ドーソンは、かつてカブスの看板選手だったが、90年代に移籍。ファンは試合に勝てなくても新しい選手を応援した。そしてデーゲームが多いというのに、1998年以降、毎年試合平均3万人以上を動員し続けている。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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