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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

西武・栗山巧に行った異例の2度の“ファームインタビュー”

 

2000安打達成記念のボードを掲げる栗山


 栗山巧がプロ2年目、2003年の春先、初めてじっくりと話を聞いた。週刊ベースボールで連載していたファームインタビューのコーナーに登場してもらうためだ。プロ1年目はファームで51試合に出場し、78打数16安打、打率.205だった栗山はこの年、開幕当初から一番に座り、好調をキープしていた。

 春の陽光を浴びながら、西武第二球場でのインタビュー。丸刈り頭の栗山は饒舌に語り始めた。そのときの言葉。こちらの<栗山選手に対する評価は“練習熱心”で一致していますが>という問いに対する答えに心を打たれた。

「打撃練習をするのが好きなんですよね。というか、あまり練習だと思っていません。調子が悪くて“練習せなあかん”という日もありますけど、日課という感じなんですよ。マシンを打つのも、ロングティーでも本当に楽しいです。それに気が付いたのは、プロに入ってからなんですよね(笑)」

 昔も今も貫いている、野球への愛情。愛するがあまり、どこか栗山は野球を空気のような存在ととらえているようにも感じる。それは当然、悪い意味ではない。空気は当たり前のようにわれわれの周辺に漂っているが、なくなると生きてはいけない。栗山にとって、野球は大切な日常なのだろう。だから、どんなに練習を重ねても、苦痛に感じることはない。

 この年、ファームで91試合に出場し、292打数80安打、打率.274と着実に成長した栗山は翌年、さらにジャンプする。3年目はファームで76試合に出場し、266打数90安打、打率.338。一軍公式戦の最終戦では初めて一軍昇格し、そのまま近鉄戦(大阪ドーム)でスタメン出場を果たす。3打席目には左腕・小池秀郎から待望のプロ初安打もマークした。

 オフに入り、その年、最後のファームインタビューの人選を球団二軍マネジャーに相談したときも印象深い。通常、同企画に2年続けて同じ選手を扱うことはないのだが、「今年も栗山は二軍で一番、頑張っていましたから、ぜひ」と懇願されたのだ。イレギュラーなことだったが、異論はなかったので再び登場してもらった。

 そのときも「練習で疲れても、寝て起きれば大丈夫。試合で悔しかったことは、練習で発散しますし。好きな野球でお金をもらって、好きな服を買えるし、好きなものも食べられますからね」など“らしい”言葉を連発。野球への一途な思いが自身を2000安打まで導いた。

文=小林光男 写真=BBM
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