週刊ベースボールONLINE

社会人野球リポート

参戦1年目に本気で都市対抗を目指すテイ・エステック。「勢い」だけではない「底力」を秘める

 

「ほぼぶっつけ本番でした」


テイ・エステックはオールフロンティアとの都市対抗埼玉一次予選準決勝で勝利(3対1)。10回裏のピンチをしのいだ中本は最後の打者を三振に斬り、雄叫びを上げた


 今年から本格的に活動を開始したテイ・エステック硬式野球部が都市対抗埼玉一次予選を突破し、南関東二次予選への進出を決めた。

 オールフロンティアとの埼玉一次予選準決勝(9月4日、県営大宮)は、序盤から度重なるピンチも、粘りでしのいだ。両チーム無得点のまま9回を終えて延長へ突入。テイ・エステックはタイブレーク(無死一、二塁)となった10回表に3点を挙げると、その裏の相手の反撃を1失点で逃げ切った(3対1)。準決勝勝利の時点で、南関東二次予選への進出条件である「3位以内」を確定させたのだ。

 テイ・エステックの活動拠点は上谷総合公園野球場「フラワースタジアム」(埼玉県鴻巣市)。部員21人が同社の埼玉工場(同・行田市)で、社業と両立しながら白球を追っている。

 チームにとって初の公式戦となった6月中旬、4チームが出場した埼玉一次予選企業チームリーグ戦では2勝1敗の2位。黒星を喫したのが、9回サヨナラ負け(5対6)したオールフロンティアだった。

 埼玉一次予選1回戦(6月26日)では、所沢グリーンベースボールクラブに勝利(1対0)。準決勝は9月2日に予定されていたが、天候不良で2日順延し、4日に行われた。試合中も雨が降り続け、厳しいコンディションでも、ナインはたくましかった。チームを指揮する菅澤剛監督(成立学園高前監督)は現役時代に熊谷組、東芝でプレーしており「都市対抗予選の厳しさ」を肌で知る。

「コロナ禍でオープン戦が組めず、雨も重なり、ほぼぶっつけ本番でした。部員が21人しかいないので、実戦練習は対外試合しかない。その状況下にしては最高のゲームができたと思います。予選の緊張感は、経験しないと分からない重圧がある。よく粘ってくれました」

 タイブレークの練習はしていなかったというが、一塁ベンチの菅澤監督は冷静だった。

「継続打順ですし、ゲームの中で無死一、二塁に変わりはない。後攻ですと、相手の攻撃を受けて作戦も考えないといけませんが、先攻でしかも下位打線(七番から)ですからウチとしてはバントしかなかったわけです」

 先頭打者は送れなかったが、すぐに切り替える。次打者が死球で、一死満塁から九番・三口英斗(上武大)の右前打で待望の先制点を挙げると、押し出し四球と、内野ゴロの間に2点を追加した。投げては先発・尾身健太朗(国際武道大)から左腕・森本雄河(上武大)につなぎ、10回裏二死一、二塁からは中本光紀(東海大)が気迫の投球で三振に仕留めた。

チームに根付く勝負に徹する姿勢


テイ・エステックを率いる菅澤剛監督(成立学園高前監督)は準決勝勝利後、選手たちに指示を出していた


 一つの壁を突破したが、菅澤監督に満足感はない。「やるからには、都市対抗出場を目指している。『参戦1年目だから』という空気感にならないようにしてきた」。若さを武器に、勝負に徹する姿勢がチームに根付いている。

 5日の決勝(1、2位の順位決定戦)は社会人球界の名門・日本通運の胸を借りる。菅澤監督は「一生懸命、やります。どれだけやれるか」と期待を口にするが、東京ドーム初出場へ向けた予選は、これからが本番だ。南関東二次予選は9月28日からで、埼玉一次予選と千葉一次予選を突破した各3チームが出場枠「3」をかけて激突する。

「まだまだ、これからですから」。菅澤監督は気を引き締めた。埼玉の新興企業チームは不気味な存在である。「勢い」だけではない「底力」を秘めており、目が離せない。

文=岡本朋祐 写真=桜井ひとし
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング