コンスタントに残す成績
下位に低迷する中日。大きな課題が得点力不足だ。
高橋周平、
阿部寿樹、
福田永将と主力として期待される選手たちが打撃不振に苦しみ、
平田良介、新外国人・
ガーバーもファーム暮らし。奮闘が目立つのはヒットメーカーの
大島洋平と主砲・ビシエドでは寂しい限りだ。
後半戦初戦の8月13日の
巨人戦(東京ドーム)で2対4と敗れた際、野球評論家の
立浪和義氏は週刊ベースボールのコラムでこう分析している。
「今シーズンは、こういう、あと一押しがなく負けた試合がかなりあります。理由はやはり打線、特に長打力です。現状、2ケタ本塁打はビシエド選手の15本だけで、次が
木下拓哉選手の7本(成績は8月16日現在)。どうしても得点力はビシエド選手頼みになり、他チームからすれば、彼だけを警戒すればいい、となっています。クリーンアップは今、三番に大島洋平選手を置いています。彼は打率も高いし、三番で悪いというわけではないのですが、タイプ的には一番でしょう。しかも、彼を三番に置くことで一、二番が手薄になっています」
相手のマークが集中する中、コンスタントに成績を残しているビシエドの働きぶりは評価されるべきだろう。今季が来日6年目。2018年に打率.348、26本塁打、99打点で首位打者と最多安打(178本)のタイトルを獲得。19年も打率.315、18本塁打、93打点をマークする。広いナゴヤドームで本塁打数は伸びなかったが、右中間と左中間を射抜く長打が多い。二塁打43本はリーグトップの数字だった。外国人打者は日本投手の変化球攻めへの対応に苦しむケースが多いが、ビシエドは柔らかい打撃でむしろ変化球への対応を得意とする。
今季は首位・巨人に対して相性が良く打率.371、5本塁打、19打点をマーク。8月27日の同戦(バンテリン)で、2回二死二、三塁の好機に
山口俊から2点中前適時打を放ち、NPB通算450打点に到達。球団の外国人打者の最多打点記録を更新した。
貢献しているのは打撃だけではない。来日当初は一塁の守備に難があるとされ、来日1年目の16年は12失策とミスが目立ったが、昨季は1失策のみで自身初のゴールデン・グラブ賞を獲得。必死に打球に飛びつき、難しいショートバウンドの送球に対しても柔らかいグラブさばきでアウトにする場面を何度も見た。安定感の増した守備は地道な努力の賜物だ。
真面目な性格と人間性
中日ファンからは「ビシエドは引退するまで中日にいてほしい」という要望の声が多い。主砲としてチームを牽引してきた功績はもちろんのことだが、ファンに愛されるのは日本に溶け込もうとする真面目な性格と人間性だ。決して日本語が流暢なわけではないが、ナインと積極的に会話を交わして人望は厚い。外国人では異例だが、オフの球団納会やファンフェスタにも参加する。家族も日本、名古屋の生活にすっかり溶け込んだ。長男・ジュニア君がドラゴンズベースボールアカデミーに入校し、父親を目標に野球に夢中になっている。
ビシエドは3年契約が今年で切れる。来季以降も不可欠な存在として球団は新たな契約を提示し、全力で慰留するとみられる。まだ今シーズンは終わっていない。「竜の主砲」として勝負を決める一撃を打ち続ける。
写真=BBM