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[MLB] 筒香復活、ドジャースに感謝

 

ドジャースによる再生計画の中で、筒香はいい結果を残し打撃が回復していく中で、メジャー出場機会を求めパイレーツに。ただこれはドジャースにとっても筒香にとっても悪くない移籍になっている


 筒香嘉智がメジャーに戻ってきた。現地時間8月16日パイレーツの32番のユニフォームに身を包み、ドジャース戦でクローザーのケンリー・ジャンセンから痛烈な二塁打。筒香は「ここまでお世話になったドジャースの皆さまへの感謝の気持ちとともに、新たな地で野球ができる喜びを実感しています」とコメントを出している。

 14日、自由契約のニュースが出たとき、不要な選手と判断されたと思った人が少なからずいたかもしれない。だが実情はそうではない。ドジャースはチームに残って欲しかった。筒香のジョエル・ウルフ代理人は「残ってくれれば、のちのちコールアップする可能性があると言ってきた」と慰留されていたことを明かす。彼らは筒香の打撃力を買っていたからこそ、5月15日にレイズからトレードで獲得した。

 その上、2人いるメジャーの打撃コーチのうちの一人、ブラント・ブラウンを担当にし、筒香のスイングを横浜時代の良い状態に戻すとともに、メジャーのピッチャーにアジャストできるよう練習プログラムを組んだ。6月17日からは3Aオクラホマに送られ、8月13日まで約2カ月間プレーしたが、筒香はマイナーの「プライオリティプレーヤー(優先度の高い選手)」として、ほぼ毎日プレーしていた。

 ブラウンコーチはビデオを見て3Aのコーチのレポートを読み、連絡を取り続けたという。結果7月はOPS.922、8月はOPS1.140とみるみる成績を上げた。だからドジャースもぜひ上で試したかった。しかしながら実は球団と筒香のウルフ代理人の間で合意事項があったのだ。

 もともと筒香の契約には、本人の合意なしにはマイナーに送れないという条項が入っていた。6月17日からのリハビリ調整ではなく、球団が7月7日に40人枠から外してマイナーで引き続きプレーさせたいとなったときに、それをのむ代わりに、筒香がマイナーで手応えを得て上でやれると感じたときは、まずはドジャースにコールアップの権利があるものの、それができない場合はリリースして他球団と話せるようにして欲しいと依頼し、合意していたのだ。

 結果、今回、ドジャースはピッチャーを必要としていたため、筒香を昇格させられず、代理人が他球団と交渉、パイレーツ行きと決まった。ウルフ代理人は「今のヨシに一番必要なのはメジャーでのプレー機会。ドジャースは後々コールアップしてくれたかもしれないが、優勝を目指していて、上がっても毎日試合に出られるかどうか分からなかった」と説明している。

 今回の件で、ドジャースはせっかく筒香を再生したのにもったいないと読者は思うかもしれない。だが今後筒香がパイレーツで打ちまくれば、活躍できていないほかの選手も、ドジャースのシステムでやり直してみたいと思うし、チームの評判は確実に上がる。

 実際、ドジャースは近年他球団で結果を出せなかった選手を再生することで、選手層が厚くなり強くなった。だから筒香も彼らを信じマイナー行きを受け入れていた。WIN-WINだったと思うのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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