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コリジョンルールで外野の守備は変わった?「ある意味、外野手はあきらめのつくルール」/元西武・平野謙に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は外野守備編。回答者はゴールデン・グラブ賞に9度輝いた名手、元西武ほかの平野謙氏だ。

Q.いち野球ファンです。すっかり定着したコリジョンルールですが、このことによって外野手の守備は変わりましたか。(岡山県・40歳)


西武時代の平野謙氏


A.外野手の動き自体は大きく変わってはいません

 2016年、NPBでも導入されたのが、コリジョンルールです。これによって、ホームでのクロスプレーでボールを持っていないキャッチャーがランナーをブロックすることや、ランナーのキャッチャーに対する危険なタックルが禁止されました。導入当時はホームでのスリリングな攻防がなくなったという批判もありましたが、ケガを防ぐためのルールですから、これは仕方ないことだと思います。

 外野手の守備がどう変わったかという質問ですが、大きくはランナーとキャッチャーの問題であり、外野手の動き自体はそれほど変わってはいません。私が思うに、ある意味、外野手はあきらめがつくルールですよね。以前は、キャッチャーのブロック次第で、タイミング的にはセーフのクロスプレーがアウトになることもありましたし、外野手も可能性があるなら思い切ってバックホームしていました。今は送球が逸れたらまずセーフです。見ているとバックホーム自体が減っているようです。ムダな送球をして暴投やエラーになったら、さらなる得点にもつながってしまいますから当然でしょう。

 先ほど外野手の動き自体は変わっていない、と言いましたが、守備位置は少し変わっていますね。前進守備が極端になっているというんでしょうか。特にランナー二塁のケースで、かなり前に出ています。前に守ること自体はいいと思います。よくテレビの解説で「芯に当たると抜けますね」と言いますが、実際に頭を越える打球は、それほど多くはありません。

イラスト=横山英史


 私の中で少し違和感があるのは、前進守備の仕方がみんな一緒ということです。肩の強い選手も大して強くない選手と同じようにベンチのサインで前に出されていますが、セカンドランナーをかえさないのが目的であれば、個々の肩で刺せる程度でいいと思います。私自身、現役当時は、そういう判断でやっていましたしね。さらに言えば、今の前進守備は、回ったランナーを殺すためというより、回さないためにプレッシャーをかけるという選択に見えます。もっと外野手の肩に頼ってもいいんじゃないかな。もちろん、あてになる外野手だけですけどね。

 このルールの中で補殺するには、送球の正確さがより重要です。いかにぶれずにキャッチャーに強い球を投げ込むか。考えてみたら現役時代の私は、それができていたんですよね、自慢じゃありませんけど、いい外野手だったな(笑)。

●平野謙(ひらの・けん)
1955年6月20日生まれ。愛知県出身。犬山高から名商大を経て78年ドラフト外で中日入団。88年に西武、94年にロッテに移籍し、96年現役引退。現役生活19年の通算成績は1683試合出場、打率.273、53本塁打、479打点、230盗塁。

『週刊ベースボール』2021年8月30日号(8月18日発売)より

写真=BBM
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