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「球界No.1ショートになれる」阪神・中野拓夢がドラフト6位まで残っていた「理由」とは 

 

伝統の一戦で光った攻守


内角に強いバッティングが魅力的な中野


 9月3日からの首位攻防戦・巨人戦(甲子園)で2勝1分けと首位を奪回した阪神。1、2戦目は逆転勝利、3戦目は6点差を追いついての引き分けと劣勢をはね返した戦いぶりに選手は自信をつけただろう。その中で、攻守に活躍が光ったのが阪神のドラフト6位・中野拓夢だ。

 3日の巨人戦(甲子園)でプロ入り初の一番でスタメン起用されると、3対3で迎えた7回二死満塁の好機で、右翼フェンスに直撃する走者一掃の適時三塁打。2戦目は二番で起用され、初回に中前打を放つと、4回に死球で出塁。8回無死一、二塁の好機では犠打をきっちり決めた。そして、3戦目は今季8度目の猛打賞の活躍。6点差を追いかける6回の先頭打者で中越え三塁打を放ち打者一巡の猛攻の口火を切った。遊撃の守備でも初回一死一塁で岡本和真の三遊間に飛んだゴロを飛び込んで好捕し、アウトに仕留めるなど再三の好守でチームをもり立てた。

 4月上旬に遊撃のスタメンを勝ち取り、チームになくてはならない存在になっている。広角に安打を打ち分ける高度な打撃技術でリーグトップの22盗塁をマーク。14失策はリーグワーストだが、一歩目の出足が鋭く、守備範囲が広い。グラブさばきも巧みで安打性の打球を何度もアウトにしている。なぜこれほどの選手がドラフト6位まで残っていたのか。他球団のスカウトはこう振り返る。

「中野は確かに走攻守そろった選手として社会人・三菱自動車岡崎でも評価が高かった選手でしたが、打撃はプロで通用するか判断が難しかった。遊撃の守備はうまいですが、源田壮亮(西武)のようにズバ抜けているわけでなく、送球が少し不安定だった。まだまだ発展途上の選手という見方が強く、ここまで活躍するとは想像できなかった」

 ドラフトの順位で序列は低かったかもしれないが、プロに入れば横一線の勝負だ。課題とされた打撃もきっちり振り抜き、内角の直球を引っ張る力強さがある。変化球への対応力も高く、広角に打ち分ける技術を兼ね備えていたことから、遊撃のレギュラーを獲得するのは時間の問題だった。

 中野は6月に週刊ベースボールのインタビューで、「僕の中ではトータルで3割を打つイメージです。個人としていい成績を残して、それがチームの勝利へと貢献できるようにしたいですし、何とか自分がチームの役に立てるように頑張っていきたいです」と語っている。相手も研究し、中野が対応に自信がある内角に投げなくなった。配球が変わったのは警戒されている証だ。

負けん気の強い性格


 球宴のファン投票ではセ・リーグの遊撃手部門で29万3009票を集め、巨人の坂本勇人を押しのけて1位で選出される。第1戦で途中出場すると、9回裏に二死満塁で打席を迎え、決勝の押し出し四球を選んだ。巨人・坂本勇人、中日大島洋平ら一流選手から助言を受けるなど、向上心旺盛な若武者は夢の舞台で貴重な経験をした。

「技術もそうですが、緊迫した場面でも自分の力を発揮できるのが中野の一番の強みだと思います。守備でミスをしても気持ちを切り替えて、臆せずに攻め続ける。負けん気の強い性格は一流選手になるために必要な要素です。攻守で伸びしろがまだまだ十分にあるし、球界No.1ショートになれる可能性を秘めている。佐藤輝明とともに阪神を背負っていく選手ですね」(スポーツ紙デスク)

 巨人、ヤクルトと熾烈な優勝争いが続くペナントレース。中野は全力疾走で最後まで駆け抜ける。

写真=BBM
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