現在の野球は、先発、中継ぎ、抑えと投手の役割が以前にも増して明確化。そのため、先発が9回を投げ切ることが以前よりも減っている。「先発完投型投手」に贈られる沢村賞は10完投が選考基準だが、完投する投手が少なくなった影響で、QS(沢村賞の場合は7回以上、自責点3以内)の達成率が補助項目として加えられたほどだ。では、シーズン10完投するような投手はどれだけ少なくなっているのだろうか? 今回は、過去10年の完投数を振り返ってみた。
過去10年で10完投到達は4人のみ
11年の楽天・田中は14完投をマークしている。過去10年では一番多い
2011年から2020年まで、各年のセ・パ最多完投数と、記録した選手を以下にまとめてみた。
●2011年
セ:7完投
館山昌平(
ヤクルト)
パ:14完投
田中将大(楽天)
●2012年
セ:6完投
吉見一起(
中日)、
三浦大輔(
DeNA)
パ:8完投 田中将大(楽天)
●2013年
セ:6完投
能見篤史(
阪神)、
メッセンジャー(阪神)
パ:10完投
金子千尋(
オリックス)
●2014年
セ:3完投
菅野智之(
巨人)、
大野雄大(中日)、
山口俊)、
井納翔一(DeNA)、能見篤史、メッセンジャー(阪神)、
大瀬良大地(
広島)
パ:9完投
則本昂大(楽天)
●2015年
セ:7完投
藤浪晋太郎(阪神)
パ:5完投
大谷翔平(
日本ハム)、
岸孝之(
西武)
●2016年
セ:5完投 菅野智之(巨人)、山口俊(DeNA)
パ:5完投
石川歩(
ロッテ)、
涌井秀章(ロッテ)
●2017年
セ:6完投 菅野智之(巨人)
パ:8完投 則本昂大(楽天)
●2018年
セ:10完投 菅野智之(巨人)
パ:5完投
多和田真三郎(西武)
●2019年
セ:6完投 大瀬良大地(広島)
パ:2完投
千賀滉大(
ソフトバンク)、
山岡泰輔(オリックス)、
美馬学(楽天)、涌井秀章(ロッテ)
●2020年
セ:10完投 大野雄大(中日)
パ:3完投
有原航平(日本ハム)
2011年から2020年までのセ・パ最多完投数をまとめてみたが、10完投以上を記録したのは4人。例えば、今から30年前の1990年代は、10完投以上の投手がひとつのリーグで4〜5人出たシーズン(1991年、1994年のセ・リーグなど)もあり、1990年には
野茂英雄がひとりで22試合も完投したこともある。
2000年代は、特にパ・リーグで複数の選手が10完投以上を記録することはあったが、徐々にその数は減り、2010年代は上記のように両リーグから1人出るかどうかという状況になった。そんな中で、2018年の菅野と2020年の大野は非常に価値のある10完投だったといえる。特に2020年の大野は、新型コロナの影響で短縮シーズンでの10完投。中日の選手としては16年ぶりの沢村賞受賞となった。
今季10完投投手は出るのか
今季、ここまで12球団最多の4完投をマークしているオリックス・山本
現在では珍しい記録となってしまった10完投だが、143試合開催となった今季は達成する選手は出るのだろうか? 2021年9月8日終了時点での各リーグ完投数Topは以下のようになっている。
●セ・リーグ
柳裕也(中日) 2完投
菅野智之(巨人) 2完投
西勇輝(阪神) 2完投
九里亜蓮(広島) 2完投
小川泰弘(ヤクルト) 2完投
●パ・リーグ
山本由伸(オリックス) 4完投
セ・リーグは2完投で5選手が並んでおり、パ・リーグはオリックスの山本由伸が4完投で、2位に3完投差をつけてトップに立っている。そもそも今季は完投する投手が少なく、セパ合計で23人(セ:14人 パ:9人)しかいない。もはや完投すること自体が珍しくなっている状況だ。両リーグ最多は山本の4完投だが、すでにシーズンは後半戦に差し掛かっており、10完投到達は厳しいだろう。
過去10年の完投数を振り返ってみたが、10完投以上は過去10年でわずか4人。昨季は大野が驚異的な投球で10完投に達したが、現在の投手起用法を踏まえると今後も10完投に到達するのは難しそうだ。
文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM