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プロ野球回顧録

鈴木誠也が挑む7試合連続本塁打…バースの日本タイ記録達成弾は数々の“肩書き”付きだった

 

苦手だった江川から


86年はバースが2年連続三冠王に輝いたシーズンでもあった


 9月9日の中日戦(マツダ広島)で6試合連続本塁打を放った鈴木誠也(広島)。これは1987年ランス、2005年新井貴浩に並ぶ球団記録だが、72年王貞治(巨人)、86年バース(阪神)の持つ7試合連続の日本記録に王手をかける一発でもあった。

 バースの前には大杉勝男(73年、日拓)、アルトマン(74年、ロッテ)、土井正博(78年、クラウン)、デービス(85年、近鉄)が挑戦し、その誰もが涙をのんだ大記録。日本プロ野球界が誇る“ホームランモンスター”王だけに許されていた神聖なる記録だったが、バースはあっさりと肩を並べてしまった。

 しかも、記録の一発はあまりにもドラマチックだった。86年6月18日、ヤクルト戦で高野光の速球をレフトスタンドに放り込んで以来、毎試合1本ずつのオーバーフェンスを続けてきたバースの「7試合目」となったのは、記録保持者・王監督の率いる6月26日の巨人戦。過去4年間に1ホーマーしか打っていない苦手、江川卓にこの日も4打席目までホームランなし。もうダメかと思われた8回、最後のチャンスに飛び出した記録の一発は、ファンの夢を乗せて後楽園球場の右翼スタンドを越えていった。

「江川は力の投球でどんどん攻めてきた。男の勝負ができたよ」

 推定飛距離150メートルの場外アーチは、これまた王が昔、金田正一(国鉄)から打った後楽園球場“最長不倒距離”と肩を並べる、二重の“記録アーチ”だ。まだある。この一発は阪神が巨人戦で放った、ちょうど8000本目のホームラン。それに何よりも、5対5の同点で飛び出した22号ソロは、打ち合いの末1点差負けした24日の“お返し”を果たす価値ある決勝ホーマーだった。

 翌27日、1956年にデール・ロング(パイレーツ)が作った8試合連続の「世界記録」への挑戦は、残念ながら失敗に終わったバース。6度打席に立ちながら“夢実現”とならず、試合後、詰めかけたカメラマンに「今日はみんなに、フィルムをだいぶムダにさせてしまったね」と茶目っ気たっぷりに語った。

写真=BBM
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