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久保田スラッガー店、「湯もみ型付け」の極意

 

「グラブ特集」用に一からつくっていただいた週刊ベースボール特注グラブ


『週刊ベースボール9月13日号』は、グラブ特集。そこで、久保田運動具店(久保田スラッガー)の東京支店(千駄ヶ谷)でグラブをオーダーし、発注からグラブが完成するまでの過程を追う企画を行った。1枚の革からグラブが立体的に出来上がっていく様は、もはや芸術的と言っていいほど。職人の技術の高さ、そしてグラブづくりへの矜持がうかがえた。

 そして久保田運動具店東京支店では、オーダーグラブの受注・製作だけでなく、「湯もみ型付け」も行ってくれる。新品のグラブは硬く、いきなり試合や練習で使うのは難しい。ただ、神宮球場にほど近い同店舗でこの作業をしてもらえば、すぐにでも使えるようになるのだ。「湯もみ型付け」の流れを紹介しよう。

1.仕込み


まずは紐を外していく


 せっかく完成したグラブだが、紐はすべて外してしまう。親指、小指部分に入っている羊毛でできた芯を取り出す。羊毛の芯の中には、さらにプラスティックの芯が入っており、2種類の芯を削って加工していく。芯がそのままだと、使い続けていくうちにどうしても捕球面に凹凸ができてしまうため、捕球面を滑らかにするためだ。削ったら、芯を元に戻して紐も付け直す。

2.湯に浸ける


思い切り湯に浸けてしまう


 紐を通し直したら、いよいよお湯に浸けていく。お湯を張ったバケツに、思い切りザブンと入れてしまうから驚きだ。このお湯の温度や時間の詳細については、企業秘密。職人が革の状態を見極めて、そのグラブに合った温度に設定している。

3.揉みほぐし


体重をかけながら揉んでいく


槌でたたいたり、ポケットにボールを入れて上から揉んだりと、しっかり型付け


 湯から上げたら、今度は手で揉んでいく。体重をかけて、さまざまな角度から揉んでいくが、東京支店の営業部主任・小川久範さんは、これを「グラブに関節をつける作業」と呼んでいる。ボールを捕りやすく、より手にフィットするようにしていく作業だ。時折、槌でたたいたりボールを入れてほぐす作業も。こちらも職人の感覚で、グラブに合った揉みほぐし方で柔らかくする。十分柔らかくなったら、レースなど形を整える。

4.乾燥&スチームにかける


店内奥にある乾燥機へグラブを入れる。乾燥には数日を要する


こちらは蒸し器。蒸す時間も水分を入れる度合いも、職人の目で判断していく


 せっかく湯に浸け、揉みほぐして柔らかくしたグラブだが、今度は乾燥機に入れてカチカチに乾燥させてしまう。水分の抜けたグラブは湯に浸ける前よりも遥かに硬いが、その後、スチーマーに入れて再び柔らかくし、揉みほぐす。乾燥させて水分を抜くことで、グラブにつけた“関節”を覚えさせることができるのだ。この作業は乾燥に数日かかることもあるため、グラブの状態を見極める職人の目がより重要になってくる。乾燥とスチームも何度か繰り返し、十分に革が柔らかくなり、ポケットができれば完成だ。

 グラブを注文した際も細やかなアドバイスをもらい、グラブ工房でも職人の技術には驚かされたが、この「湯もみ型付け」も膨大な知識と目、技術を要する。ほかにも革をなめす業者や刺繍を専門にする業者もおり、グラブづくりはあらゆる“職人”の技術の結晶なのだということが分かる。グラウンドで選手が身につけているグラブも、多くの人の手に触れてきているのだ。

オーダーしたのはここ!


久保田運動具店東京支店


〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷2-32-1 TEL:03-5771-8989

取材・文=依田真衣子 写真=BBM
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