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高校野球リポート

父は元広島左腕、現西武球団幹部。慶應高の背番号10右腕は「春には圧倒できる投手になって戻ってきます」

 

幼少時から父に言われ続けた助言


慶應義塾高の右腕・広池浩成(2年)は桐光学園高との神奈川県大会3回戦を2番手で救援。打線に流れを作ったものの、チームは8回コールド敗退(6対13)を喫している


 公式戦初登板は、重大局面でやってきた。桐光学園高との神奈川県大会3回戦(9月11日)。1回裏、慶應義塾高のエース右腕・沖村要(2年)がコントロールに苦しみ、3つの押し出しで計3失点。二死満塁でバトンを託されたのが、背番号10を着ける右腕・広池浩成(2年)だった。

「難しい場面であったことは間違いないですが、あそこで抑えてこそ投手だと思います。緊張とかはしなかったですが……」

 相手の右腕エース・針谷隼和(2年)にスライダーをとらえられ、走者一掃の左中間二塁打を浴びた。慶應義塾高は立ち上がりにあまりに重い、6点のビハインドを背負った。

 慶應義塾高は2回表に広池のスクイズで1点を返すも、その裏、2点の追加点を奪われる。

 1対8。厳しい展開であることは確かだが、マウンドを任された以上、打者から目を背けるわけにはいかない。幼少時、父・浩司さん(西武・球団本部副本部長)から言われ続けた助言がある。

「次の1球を投げること以外にない。前を向いて、投げ続けろ」

 父・浩司さんは立大卒業後に、大手航空会社に就職も、野球への道が捨てきれず、広島のテスト入団を突破し、カープアカデミーを経てドラフト指名を受けた苦労人だ。貴重な救援左腕として、NPB通算12年で、248試合に一軍登板した実績がある。現在は西武のフロント幹部として、手腕を発揮している。

父・浩司は広島で12年間プレーした左腕だった


 父の言葉は絶大だ。投手が投げなければ、試合は進行しない。つまり、どんな展開になっても、切り替えることが重要である、と。広池は味方の好プレーもあり3、4回を無失点に抑え、打線にリズムを呼び込む。慶應義塾高は5回表に集中打で5点を返し、2点差に詰め寄るも、中盤以降、救援投手が粘り切れず、8回コールド敗退(6対13)となった。

 広池は5回表に代打を告げられ、一塁ベンチで敗戦を見届けた。

好きな投手は涌井秀章


 1年秋に初めて背番号20でベンチ入りしたが、2年春、夏はメンバーを逃した。新チームとなって努力を重ね、「最後の最後で、食い込んだ形です」と、背番号10を手にした。

「自分がもっと良い投手であれば、先発を任されていたはず。不安で送り出されるような投手ではダメです。この一冬で大きくなって、春には圧倒できる投手になって戻ってきます」

 現在の最速138キロを、アベレージ140キロ台を計測することを目指す。この日はスライダーしか投げなかったが、持ち球であるフォークの精度を上げていきたいという。

 好きな投手は楽天涌井秀章。「マウンドさばき、顔に出さない。打たれても、次の1球に集中力を研ぎ澄ましている姿に尊敬します」。卒業後は父もプレーした神宮(東京六大学)の舞台を夢見るが、高校野球の集大成として、来夏の甲子園出場が最大の目標である。これから長い冬に入る。チームから全幅の信頼を受け、スケールアップした背番号1を披露するつもりだ。

文=岡本朋祐 写真=長尾亜紀
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