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「答えが見つけられるように」新たな“帝京魂”を構築し強豪復活へ。名将の後任に意気込む金田優哉新監督

 

監督初さい配で5回コールド勝利


帝京高・前田三夫前監督の今夏限りでの退任を受け、金田優哉監督が秋の東京大会を指揮する。八丈高との一次予選1回戦(9月12日)を5回コールド(12対0)で勝利した


 甲子園優勝は春1度、夏2度。通算51勝を挙げた名将の後任は、相当な重圧である。

「プレッシャーしかありません。日々、押しつぶされそうになりますが、母校を指導できることは幸せなこと。選手と一緒に戦っていきたい」

 1972年から50年、帝京高を率いた前田三夫前監督が今夏限りで退任。秋の東京大会を指揮する金田優哉監督(36歳)は、伝統のタテジマのユニフォームを着て背筋を伸ばした。

 前田前監督は今夏の東東京大会準決勝敗退後、しばらくグラウンドから離れ、金田コーチと直原大典コーチに練習を任せていた。すでにユニフォームを脱ぐ決意を固め、ごく一部の関係者に退任の意向を伝えていたが、甲子園大会の期間中に、自身の話題が出ることを避けたかったという。だが、長雨の影響で甲子園大会は順延の連続。当初は8月25日の決勝の予定が、29日にまでずれ込んだ。

 28日に秋の東京大会の一次予選の抽選会があり、連盟登録するタイミングで「退任」が公となった(前田前監督は名誉監督就任)。急きょ、現場を任されることとなった金田監督は正直な思いを明かす。

「戸惑いはありました。ただ、選手は優勝、甲子園出場を目指して頑張っている。負担にならないように、不安にさせないように、この日のブロック予選初戦に影響が出ないことだけを考えてきました」

 9月12日。一次予選1回戦(帝京高グラウンド)で八丈高に5回コールド勝利(12対0)し、監督初さい配を、白星で飾った。

「投げる、打つ(という技術的なこと)より、チームになっていない。夏の大会でドームまで行って(今夏の東・西東京大会は東京五輪の開催の影響で準決勝、決勝は東京ドーム開催)満足したところもあったんです。目指しているのはベスト4ではない。あくまでも我々は甲子園を目標としている。優勝するんだ! と。このフレーズを言い続けています」

 旧チームは昨秋の東京大会2回戦敗退、今春は1回戦敗退と結果を残せなかった。3年生の奮起により、準決勝まで勝ち上がったが、どこか「達成感」のような空気が流れていたという。そのムードが、許せなかったのだ。

「絶対にこの秋、優勝する」


 金田監督は2年夏(2002年)に背番号15を着け、甲子園4強を経験している。

「大甲子園の感動は、忘れません。入場行進したときの足の感触は今も、覚えています」

 2年秋以降は主将としてチームを束ね、捕手のほか、投手などさまざまなポジションをこなした。筑波大では投手で、大学では保健体育科(中学・高校)の教職課程を履修した。卒業後は一般企業に就職するも「野球から離れて、自分のやりたいことは何かと考えるようになりました」と2年後、脱サラして教員の道を歩みはじめた。駒大高での1年間のコーチを経て、2011年に帝京高に赴任。前田前監督からの熱烈ラブコールを受ける形で、母校に恩返しする職を選んだのである。

 自らが指揮する公式戦初戦を前にして、恩師からは「やってみろ! どんと、やってみろ!」と背中を押された。帝京高は11年夏を最後に甲子園から遠ざかっている。ちょうど、金田監督が赴任した年である。

「(コーチとして)責任を感じています。約10年、前田監督の下で勉強させてもらい、監督の情熱、厳しさを引き継いでいきたいです。今回、監督が交代。ここで落とすわけにはいきません。絶対にこの秋、優勝するんだ、と。自分にも言い続けています」

 前田前監督は「真面目で、本当に良い男なんですよ!」と、金田監督の指導力を高く評価していた。同校野球部の合言葉となっている「帝京魂」とは、何なのか。

「よく聞かれるんですが、何なんでしょうね。答えが見つけられるように、日々、選手とともに取り組んでいきたいと思います」

 八丈高との一戦で、帝京高ナインから見えたのは「勝利への執念」だった。打線は11安打とつながり、投げては1年生エース右腕・高橋蒼人が5回を投げ、許した走者は失策による1人と、圧倒してみせた。来春のセンバツ甲子園出場を目指す戦いは、始まったばかりだ。金田監督はこの秋、一戦一戦を積み重ねていく中で、新たな「帝京魂」を構築し、強豪復活へと導いていくつもりである。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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