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巨人・中島宏之が勝負強い打撃 死球で怒りを露わも「巨人にはいないタイプ」と称賛の声が

 

与えられた役割を全う



 首位・阪神を追いかける巨人。今年は菅野智之坂本勇人丸佳浩ら主力選手が故障や不調で戦線離脱するなど、満足な状態で戦えた試合は数多くない。その中で幾度もチームの窮地を救ってきたのが39歳のベテラン・中島宏之だ。

 苦しんだ移籍1年目の2019年を思えば、見事に復活したと言える。43試合出場で打率.148、1本塁打、5打点と結果を残せず、オフには野球協約の限度額制限を超える1億3000万円(87%)ダウンの年俸2000万円(金額は推定)で更改。限界もささやかれた中でプライドをかなぐり捨てて打撃フォームの改造に踏み切った。代名詞だったバットを大上段に掲げる構えからグリップの位置を両肩より下げ、左足の上げ幅も小さくすると、打ち損じが大幅に減った。移籍2年目の昨年は100試合出場で打率.297、7本塁打、29打点とリーグ優勝に貢献。中島の持ち味である逆方向の安打も増えて復活した。

 だが、一塁のレギュラーを保証されているわけではない。今季は新外国人・J.スモークの加入で春先はベンチスタートが多かったが、6月中旬にJ.スモークが突然の退団。この緊急事態に一塁でスタメンの出場機会が増えた中島は勝負強い打撃で貢献する。8月18日のヤクルト戦(松山)で決勝打となる逆転適時打を放つなどチームへの貢献度は高い。同じ一塁を本職とする中田翔日本ハムからトレードで移籍してきても、動じない。与えられた役割を全うし、スタメンで出場した試合はきっちり結果を出す。打撃不振でファーム降格した中田と対照的に、一塁のレギュラーで打率3割近くのハイアベレージをキープしている。

「巨人打線で今、最も嫌な打者ですね。中島の強みは速い球をきっちり打ち返せること。詰まらせても技術で二塁の頭を超す安打を打てる。打撃フォームを改造して下半身を使った打撃を取り戻してから、変化球に泳がされることも減った。穴のない打者なので走者をためて回したくないですね」(他球団のスコアラー)

 1982年生まれの39歳。西武内海哲也、ヤクルト内川聖一と同世代でベテランと呼ばれる立ち位置だが、若手の時から変わらない闘争心にみなぎっている。9月11日の中日戦(東京ドーム)では1点差を追いかける9回二死二塁で相手守護神のR・マルティネスから左肩付近に死球を受けると、表情をこわばらせ、マウンドに歩み寄った。R・マルティネスが帽子を取って歩み寄り謝罪したことでグータッチの「和解」をしたが、大きな反響を呼んだ。

「賛否両論ありますが、中島が怒りを態度に示すことで相手投手は次の打者以降に内角に投げにくくなる。おとなしい選手が多く、巨人にはいないタイプですが、勝負に執着する姿勢は見習うべき点があると思います」(テレビ関係者)

大記録達成の期待も


 大記録達成の期待もかかる。通算2000安打だ。西武でプロ4年目の04年に正遊撃手に抜擢されると133試合出場で打率.287、27本塁打、90打点と大ブレーク。06年から5年連続を含む打率3割を6度マークした。09年は173安打で最多安打に輝くなど、30歳のシーズン終了時点で通算1380安打。その後はメジャーに挑戦し、オリックスを経て巨人へ。打撃不振も苦しみ安打のペースが落ちたが、昨年に復活して1892安打を積み重ねた。

 中島は大記録への意識はないことを語っているが、巨人の勝利に貢献する一打を打ち続けることでその偉業に近づく。今後も活躍が楽しみだ。

写真=BBM
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